2025.9.22 インターネット・クィア・フラグメント
なう:仕事で落ち込んでLINEしたら母が「ど〜せあんた今部屋汚いんでしょ? 掃除してあげるよ!」と一人暮らしの自宅に来てくれることになり、それはありがたいのだが🏳️🌈クィアネス🏳️🌈書籍をいくつか床に積んでいるのでどうにか隠さなければならず、でも忘れたところに置いてるかもしれず、キリがなくとりかかるのが面倒くさくてベッドでうだうだしてる。
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前置き:夜になるとセンチメンタルになってその状態で文章書いてそのまま投稿しちゃうのあんま良くないんだろうなと思いながら、でも私は"こういう"断片ーーインターネット・クィア・エピソードをかき集めて今日まで船を渡れたのであり、それは出版物から誰かのアカウントの生活の中での吐露のtweetまで色んな媒体であり、そういう人がもしかしたらいるかもしれないと思ってみることにした。
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そもそも:パンロマンティックのアセクであることを親にカムアウトしていないので、仕事で落ち込んで励ましを求めると最後には「あとは、彼を見つけてみるとか」「そんな人がいたらねえ」みたいな方向の励まされ方になり、疲弊。パンロマンティックと書いたが近年レズビアン寄りという感じで、一時期婚活もしたのだが「男性と人生を共にするの、ガチで無理だな」となった。という経緯を、母はまだ知らない。
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話は逸れるが:年齢もあり結婚していない方が普通では無いみたいな感じのお年頃であり、会社で中途入社の人とのランチの時にその人が「ご結婚されてるんですか?」って別の人に聞かれてて、同い年だったからこえ〜と思った(なお、私は訊かれない。どうぞその勘に従ってこれからも訊かないでくれよな)。
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実は:精神科閉鎖病棟入院明けで鬱っぽかった1年半前くらいに「女性パートナーが欲しいかもしれないアロマ/アセク女性オフ会」に参加し、偶然そこで会った5歳年下のアロアセ女性に初対面から"きみに出逢えて 明日が好きになった"になり、連絡先をゲットし月1で遊ばせてもらった。そのことは告げないまま、その場で理想の関係として「人生の固定メンが欲しいよね」っていう話をしたので、今年の3月で会ってから1年経ったので「人間として好きなので、人生の固定メン候補として検討してくれませんか?」と告白し、いいですよ〜みたいになった!
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それで?:変わらず会い続けている。あ、関係は良好でめちゃそこはハピなのだが、つまり、「仮固定メン状態」であり、ギプスのようなものかもしれない。それが嬉しいんだ〜!という話をしたら、「……それって別にもう固定メンになったのかと思った」と言われる。認識合わせをしていかないといけないのは分かっている。「固定メンとどんな風になるのがりそうの関係ですか?」と聞いたとき、「う〜ん、まだ分からないけど、作業通話とかしたい、会う頻度を増やしたい」という答えだったので、つまり私は誰かと一緒に住むことがしたいのだが相手はまだそこまで関係値ない人にそれを想定できないかもと思ったこと、また5歳差であり私は身を固め始める年齢だけど相手は社会人1年目だから、まだそこまででは無いかもなということから、私のその望みは次の3月くらいに取り出して聞いてみようかなと思っている。だから、仮固定状態。
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で?:という、まだどうにもなってない状態(本当にウケることに法制度上我々は身を固めることができないんだけどね!)であることもあり、親にカムアウトしようがない。
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大丈夫じゃない?:母は子どもが好きで、弟1は結婚したけど子どもは作らないという方針で、弟2は軽度知的障害があり、私はこれなので、つまりうちに子どもが生まれることはなく、滅びゆくってこと! ーーを、母はいつかは受け止めることができると思うからそこは別にいいと言えばいい。問題は母が三姉妹で従姉妹もいて親戚が多いことで、まあそれだけ数もいれば受け入れられない人もいるわけで(叔父が怪しい)、あと従姉妹が2人とも女の子なので親心としては私に近づけたくないんじゃないか、みたいなこととかを考えるので、それもあってカムアウトに悩んでいる。
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てかさ:精神科閉鎖病棟入院期間にそもそも家族が私の一人暮らしの自宅に入って片付けをしてて、その時に同性愛やアセク関連の書籍の存在を認識した可能性は全然あるんだけど、でも探りを入れてくることは無いんだよね。可能性として過ぎりながらも、私が学生時代に男子と付き合ったから違うと思ってんのかな。そうかも。
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で?:たったそれだけだよ。そういうことに耐える時間が続くだけのことだよ。きみもそう思う?
ザ・セント・オブ・パイナップル・アット・ジ・エンドオブサマー〜20250913-INI XQUARE MASTERPIECE〜
【構成】
1:名古屋旅行記
2-3:ライブレポ
※旅行記が2000字くらいあるので飛ばしてください。
1.「デカすぎんだろ…」と運命のブラック
INI XQUARE MASTERPIECE の初日に入るためにいざ名古屋へ! 初日ってな〜んも分からんから楽しみだよね。
12日の21時、リュックサックを背負って東京ミッドタウンの地下をさまよい、座れる場所を見つけて『斜め論』(松本卓也)を開きます。朝井リョウの『インザメガチャーチ』が読む前から怖すぎて、妄想のインザメガチャーチを脳内で勝手に生成しては「私のこのアイドルに関してとった行動も、インザメガチャーチ内では批評対象になっているかもしれない…」と怯えるという意味の分からない幻影に憔悴させられるタームに入っており、同等の密度の本を頭に入れることで忘却に努めるという作戦で、つまりこの2冊をリュックサックに入れて名古屋遠征をすることにしたのだった(重いんよ)。デカイ本にはデカイ本ぶつけんだよ! 1/3ほど読んで、時間になったのでバスに乗り込む。結構ぐっすり眠れた。朝6時、曇天の名古屋に到着!
今回の追加公演グッズであるメッシュゼッケン(尾崎匠海ver.)をトップスに、ホワイトのスカートを合わせました! カジュアルウェアが似合わないからいつもはグッズを身につけるのを躊躇してしまうのだけど、かわいい着こなしを上げてくれたMINIにのせられて、今回は着てみました。ネイビーとオレンジの組み合わせ、間違いなく可愛すぎる。

モーニングを食べてお店を出たけどあらゆる施設の開店時間はまだだから、コメダで『斜め論』の続きを読みました。2/3まで読んで、丁度いい時間なので名古屋市科学館に向かう。途中で同じくちよちゃんのメッシュゼッケンを身につけたMINIらしき人とすれ違ってワクワク。名古屋市美術館も凄いらしいのだけど、臨時休館で泣く泣く諦める。INIのライブで訪れた遠征先の、地域の博物館や美術館に行くことにはまりつつあった。

名古屋市科学館はとにかくデカかった。外観もデカいし、科学館も生物館もプラネタリウムもあるし、6階まで展示あるし。子どもも科学に親しめるように全ての展示の科学への導入が工夫されていて、力が入っていた。端っこから見ていくんじゃなくて興味のままに見ていったら、本当に物理系に興味無いんだなってウケた。いちばん楽しかったのは細胞共和国というアニメーションが展開される展示です(生物が好きな人)。
せっかくだからひつまぶしを食べようとお店に行ったら30分経っても全く列が進まない。諦めて台湾ラーメンに切り替えるか〜と歩いていく途中にひっそりと隠れ家的な鰻のお店を見つけて、そこでひつまぶしを食べることにして、予期せぬラッキー。おまけについてきたデザートのプリンがなめらかクリーミーで凄かった。嬉しい。
ここから会場に行くまでの時間で、愛知出身の後輩から勧められた古着屋さん巡りを大須ですることにしていた。目星をつけていた古着屋さんに順番に巡っていく。2件目でアメリカ80年代ものらしい、大ぶりで金縁の四角い黒曜石色のピアスにときめいて、ゲット。4件目の古着屋さんで、あれ? とふと手に取った黒のシフォンワンピースを着てみたらめっちゃ似合ったので(そか)店主さんに「私これめっちゃ似合ったので買います!」って言って、お迎えした。運命を感じます。古着屋さんが実は初めてだったのだけど、店員さんが話しかけて優しくしてくれて楽しくなっちゃうね。さっきのピアスと合わせて涼しくなったら現場に着てく、ブラックの運命のシフォンワンピースを手に入れてライブ始まる前から既に最高の気分♪
いざ、開演前にフォロワーと会うべくドームへ! ドーム近くのイオンに流れ着き、足がこの時点でかなり浮腫んでいたけど「ライブってアドレナリン出るからなんとかなるっしょ!」と限界に挑戦しひたすら店内を回遊する。そうしていたら、DoleとINIのコラボしたスウィーティオMINIのパイナップルが沢山積まれてるではありませんか!この夏、プル活コラボの一報が入ったときに「後輩よ、私が丸ごとパイナップルを捌くのを目撃し、そのパイナップルを食べるパイナップルパーティーをしないかい?」と既に人を誘っていた私は、自宅近くのスーパーにDoleのパイナップルは置いて無さそうだから、ひとつここで買うのはどうだろうと買うことにしたのでした。

普通にミニサイズなのに赤子の頭くらいの重さあってワロタ。密度どうなってる? 若干後悔しましたが、これを持って歩いていると売っていた場所を聞かれ2人のMINIが多分同じくコラボパイナップルを購入してくれたので、宣伝効果抜群であった。
フォロワーとも会って、会場入り。
ついに、ドーム公演の1日目が始まるのでした。
2.開幕!
※推しであるところの尾崎匠海さん定点気味です。
・開始初手WMDAで尾崎匠海さんが1番初めにモニターに映った時から、挑戦的で高圧的な目をした、ステージを掌握する者の表情をしていて、This is 尾崎匠海's performanceだよ…と大好きだった(そか)
・とにかくこのブロック、藤牧京介さんが場数を踏むことで磨かれた、実力に追いついた装甲のような自信をまとったパフォーマンスをしていて、屋台骨というか固くはめられたビスというか、その存在感からステージを磐石にしていて良かった。
・SPECTRA、確かグリーンとピンクの照明でプリズムみを感じさせて良かった。雄大の身のこなしがどう映ってもとにかく綺麗で見せ方が上手くて、その裏に自分のパフォーマンスへ向き合ったであろう日々の分厚い層を見るようだった。
・BOMBARDA、verse2の迅ちゃん→ちよちゃんの流れのところで、迅ちゃんが炸裂弾を爆発させるような歌い方で歌ったのを受けたちよちゃんは、己の色であるスマート性であえてテンションを抑えて凝縮させ落とし込むというまとめあげ方をしていて最高だった。
・もう既にSPECTRAの時点でみんなのパフォーマンスが本当に良くて泣きそうになってたんだけど、モニターに赤地に黒で"MASTERPIECE"って表示されて演出が終わるとこ、最高にぶち上がって開始から景気が良かった。
・ここでVCR:Youngかな? 金髪で体育館の扉から飛び込んできて爽やかに笑う尾崎匠海が大写しになった時、永遠に手の届かない少女漫画色素薄い系先輩概念でうつくしかった。
・箱がピンクとオレンジのネオンで光った時に「待って」ってなったよね。さのたくユニットYOU INの開始です。立てかけてあった写真立てを手にとってそこに映っているすきであろう人を想う演技をする尾崎匠海さん、机の上に寝転がりながら写真立てを見つめ抱きしめるという現実ではありえないシチュエーションを演劇力で「ミュージカルとしての嘘ですよ〜」と好きな人を想っている姿なんだと感じさせられるように落としこむ手腕に、そういうところが! 好きで! になった。雄大がずっと美人で真珠のようだった。藤牧京介さんもまさか自分が作詞した失恋の曲がこんな風にかわいさの側面を広げた演出でステージになるとは思わなかっただろうな〜って過ぎり、曲ってその人の手を離れても無限に新しく開き続けるんだなって余白の広さを想った。
・Pineapple juice、メンバーそれぞれの着ぐるみ(着ぐるみって言うな!)との向き合いの姿勢が違って個性が出ていてよかった。尾崎匠海さんは歌のおにいさんみたいに、着ぐるみの背負っている世界観を壊さないように一緒に踊る地平を同じくした存在として扱っており、解釈一致。あとこれは煩悩なのですが、許豊凡さんが魅惑のクロップド丈で着ぐるみとシェイキン!みたいな振りを踊っていて、眩しかった。
・挨拶で尾崎匠海さんが「ども〜っ✨️太陽ですっ✨️」ってやった後に許豊凡さんが「ども〜っ!フェンファンです!」って天丼したの本当に笑いに対して貪欲で本気で最高だった。許豊凡さんのバランス感覚 is 何。
・ここからムビステだったらしいけど記憶全て消えてる(なお、当方座席5階席3塁側天井席であるが全体が見えて意外と良かった)。Potionってマジでかっこいいよね。
・AMEZE MEバンドでやったの良すぎる。髙塚くん:ガチギター←倒れる たじまさん:ドラム←そんなのはかっこいいのは分かってんだよ 木村さん:キーボード←かわいい 後藤さん:ベース←反則だろうが!!!!!!!!!!!!! てかマジで練習量どない?
・Busterz、フェンりひという声質の艶最強ケミの歌声が合わさってとんでもないことになってたし、フェンりひ松田迅様のロングコートは衣装班に金一封入れさせてくれって感じだったし、ここからモニターによる背景映像の重厚感が凄いことになってるしで、ビックマネーを感じて大変景気が良くて良かった。
・BAD BOYZはこの流れで来て、アレンジ演出がドームコンにて完成したなあと思いました。黒いハーネスやコルセットを身につけた白衣装INIさん……衣装班の方向にに再び敬礼……
・ONE NIGHT、良すぎて覚えてないよ最早
・ハイハイハイハイハイここでね、木村柾哉さんがはめていた黒手袋を噛んで外すバックにNon-Stopのあの死ぬほど聴いたイントロが流れ、絶叫。
・Non-Stopくんです、はい、もう私の中の優勝は満場一致でNon-Stopくんなんですよ(暴論にて監獄へ)
・Non-Stopくん、コレオが本当に素敵だな〜、手首につけた香水の香りをかぐ振り付けが綺麗だな〜と思っていたらフェン牧が黒い紐を使って縛りあって(縛りあってはないです)いるターンがあってあれ……?になったと思ったら、皆んなが手に黒い紐を持ち始めて待って……?となったら、薄々勘づいていたけど目隠しをするような動作をし始めてそのサビでパートを担当する田島将吾さんがモニターに映り「将吾さんにだけはそれをやらせちゃいちばんダメだろ!!!(※つまり、逆です)」になって、3次元でこんなことあっていいんだになった。
・まあその次が尾崎匠海さんでね、あの、絶対に変化をつけてくるとは思ったけど目隠しを艶めかしくずらし目を覗かせるというのを自パートでやっていて、たくみなぎじゅつだ………名は体を表す………技のある男を好きになってよかった……技のある男を好きで嬉しい……!の感情になった。尾崎匠海さんは変化をつけることが期待されるパートを任されがちで、120点をたたき出してくるので……
・Brighter、よるの寝る時につける橙と飴色の中間の色のようなライティングになっていた。等間隔に白衣装で立つみんなも相まってキャンドルを灯している灯りのようにドーム全体が包まれてやわらかく優しく清廉な歌声が響いて、とてもうつくしかった。
・HANA_花が最高の演出でパフォーマンスされたの、宝物。
・ここのVCR、みんなパンキッシュ&クールに決めてたのに尾崎くんのターンになった途端ぽやぽやきゅるきゅるになって、良かった。
・スカジャンの胸元に鮮烈に刺繍された"西牧"の文字に、最高最高最高に。西くんの砂漠とムースみたいな声と藤牧さんのラップになっても透明感と清涼さがある声の対比が良かった。
・ここからのブロックの黒赤衣装もかっこよかったな〜! "無敵の旗掲げろ"の"旗"をがなりにしてきた尾崎匠海さんにめろめろめろめろ。
・Bullseyeのりーくんの最下層を走る地下鉄の反響音みたいな弦を弾くようなど低音をドームで聞けて最高。AIMするようなコレオ良かったですね。
・確か3Dで尾崎くんがサングラスを歌詞に合わせてずらしていて、神だった。
・What a night、大好きなところのひとつに尾崎くんが"色濃く染る夜に 近づく影にYou&me"の文章的な情景描写パートを任されているところがミュージカルっぽくていい!があったんだけど、そこを歌う尾崎くんがこのドームコンではその2人の甘美な近づく関係性を感じさせるような色気のある動きをつけて歌っていて、大好き…になった(そか)。
・最後の挨拶で「太陽になってみんなを照らせたと思うんですけど、皆の方が太陽でした✨️いや〜負けました✨️」って言ってくれて、光に群がる蛾のような私というオタクもあなたから見たら太陽になれるの…?になったし、こういう時に負けましたって言える尾崎くんのことがそういうところが好きだよ…になった。
3.深夜バスにてパイナップルは香る
公演が終わってしまって、すっかり暗くなった夜のナゴヤドームから駅までの帰り道に、アリーナの質実剛健な骨組みのしっかりしたぶち抜くポイントを決めた演出も好きだったけど、ドームはとにかく豪華で華やかさが尽きなくてどっちも味わえて本当に良かったと思いながらずんずん歩いていった。オアシス21で深夜バスを待ちあっという間に時間になって、疲れた身体を座席に預けた。眠れなくて時折目を覚ませば、足元に置いたパイナップルから、細かくその実を弾けさせるような、強い香りが微量立ちのぼってきた。
このレポを書く前に、これまで書いてきたライブレポを読み返していた。凝縮された時と感情があって、よくこんなにライブの最中の感情を細部まで空気ごと覚えてて書き留められるなと自分で自分に思った。暑さのせいなのか歳のせいなのかその両方なのか、あんなに持って帰りたいと思った表情や踊り方だったのに、ライブの後に書き留められるほどそれを思い出せないことが増えた。書かなければ本当になくなってしまうかもしれないと、頭が無意識に選定した特に強い記憶を必死で印象に残る言葉に変換して、なんとか持ち帰っている。昔のようには書けないことが淋しくもある。
でも、多分記憶力のせいだけじゃない。これを覚えておきたいと思ったことが次の瞬間瞬間にさえ書き換わっていくほど、目まぐるしく楽しくて洗練された結晶のようなパフォーマンスが続くライブを彼らがたゆまない努力とセンスで作り上げてくれてたということなんだと思う。
足元に鎮座するという表現が正しい、小さなサイズでもずっしりと重いパイナップル。言葉に表せない思い出が確かにこの世にあるということ、表せないことを本当にかなしく思う魂がこれまでもこの世にあったということ、目撃するということは残せないことを同時に手放して諦めなければいけないということ、遠く諦めることを繰り返しながら、だからこそまた会える場所でしか分からない瞬間を味わうために再び会いに行くこと。
向こうを見透かせないほど分厚い皮の下に詰まっている、食べている時しか抱けない感情のために食べる果実みたいだ。そういう空間が存在することを私は知り、それでも強い香りを必死で辿って記録することだってやめないでいたい。残ること、残らなかったこと、その2つのどちらも欠けてはいけないものなんだと、そのどちらも大切なんだとわかった夏の終わり。

黒曜石レボリューション〜2025/5/25 INI XQUARE in K-Arena〜
■はじまるまえ
"ツアータイトルである「XQUARE(スクエア)」には、“INIならではの方法で導く新たな革命の場所”という意味が込められており、「X:未知数=INI」と「SQUARE:革命が起こる広場=ライブ会場」を掛け合わせたものになっている。"
https://www.billboard-japan.com/d_news/detail/148176/2
・5月に入ってからレ・ミゼラブルの映画版を観た。"革命"についての解像度を上げた状態で公演に入れるのが嬉しかった。私はINIの掲げる革命が好きだった。どうしてかをまだ言語化できてなくて、でもツアーを通してより強く思ったので後述する。
・INITIME LIVEではレベル7に飛ばされたのだけど、今回アリーナに入ることができた。お隣のフェンMINIさんに話しかけたら、ものすごく親切なことにガチャで出た尾崎くんのキラキラキーホルダーを譲っていただいた。家宝にします。その節はありがとうございました!
・暗転前、流れていたINItializeの音がどんどん大きくなってワクワクした。INItialize、1番好きかもしれない。開幕だ。
■かいえん
※推し定点気味です。
・WMDAでフード被って現れて「こりゃ革命起こす側だね〜〜」になってのっけから良かった。WMDAってアンセムだもんね。きっと革命軍が歌う歌なんだよね…(それはレ・ミゼラブルの見すぎ)。ステージ上部の足組が舞台みたいに組まれていたのも相まって、演劇感があってそこも演劇の題材となる革命というテーマを感じられて最高だった。
・西くんが拡声器持って始まるLOUD。我が推しの尾崎匠海さんにおかれましては、今回パーマ暗髪前髪ありで沼男ビジュながらダークな覇気を自分に降ろして発していて、曲及びツアーコンセプトをまとって演じきるというやり方で挑んでいて、大好きだった。それめちゃくちゃエネルギー使うでしょうに…
・BOMBARDA、Cメロのオルゴールのようなくるりと回る入れ代わり立ち代わりおざまきの艶よ!力強くもしとやかな歌声も黒衣装も相まって凄かったんだって!
・Cardio→DROPの流れ、ありがとう…ありがとう…治安の悪いイントロから始まるけど品を残しているINIさいこうだ!
・MC、あんなに覇気を出していたのに挨拶わやわやふわふわなままで乗り切ろうとする尾崎匠海さん、わからねー男だ。
・Dramatic→CALL119、センステが横からチッケムみたいな状態で肉眼でも見えて本当に嬉しかった。しょごさんのダンスまじかっけー! あと大夢くんの声がめちゃくちゃ通ってるしめちゃくちゃ輝いてる。アイドルの星、髙塚……尾崎匠海さんの"もっと強くBurning"は本当にエンジンふかしてるときの炎と爆風の音がする歌声でだいすき。
・VCR、台詞がない中で崩れ落ちる姿で状況のむごさ無念さをこちらまで感じさせる演技をする尾崎匠海さんのことが…おれは…
・牧さんのほぼアカペラみたいな歌唱から始まるBright。歌手や……。白衣装が本当に綺麗で、ラスサビでおざまきが背中合わせになってから目を見合せて歌うところ、世が世なら宗教画になってた。
・Mirrorってマジでいい曲だなと思いました。
・ライブを通して個人的に演出が最も良かった曲のうちの一つがI'm a Dreamerだと思う。曲が始まる前、皆がセンステからメインステージを振り向いて、そこまでの花道を孔雀の羽のようなエメラルドグリーンとパープルピンクの交互に連なる、開かれた扇のようなライトが照らしだし、シャボン玉が舞っていて本当に「夢」という感じだった。"夢を持つことなら いつでも遅くないんだよ"という歌詞は、いつもなら「私はもうその胸が軋むような季節は終わったひとだからな〜」と思って過ぎ去った日々の青い影を見つめるような感覚で聴いているのだけど、この日のこの曲は逆張りや疑念が立ち上がる暇がなくて、歌詞が全部すっと素直に入ってきて本当にそう思えたから、曲が伝わるってこういうことなんだと思った。
・Drip Dropの日替わり歌唱パート、藤牧さんの命令で尾崎くんのミルクをまとわせた羽のようなファルセットが聴けて感謝!
・10THINGS、せり上がりのコーナーに3人ずつ座っていたのだが、木村柾哉さん♡尾崎匠海さん♡髙塚大夢さん♡のあざとかわいこぷりぷりちゃんズの一角があり、曲中ずっと三者三様の歌詞解釈あざと挙動をしていて、大変忙しく潤った。
・ここで上から幕がスパーン!って落ちてきて演出が始まったのガチで楽しい〜〜!になった 。幕って、いい……
・ONE NIGHTも本ツアーで演出と曲ががっちりハマってポテンシャルを活かしきっていた曲のうちの一つ。静かな夜の中で起こる革命と奪われるハートをテーマとするに相応しい、夜露と闇に煙る輪郭の混ざったような色気をまとっていて良かった。
・バドボ、尾崎匠海さんが確かスタンドマイクに手をかけてたんですけど目撃した瞬間から脳が破壊されて全然記憶が残ってねえ…!あと柾哉さんのリムレスやべえ!
・大目玉であり公演の脊椎、3Dの始まり方が暗転の中からの心音のようなビートなの本当に震えた。コレオかっこよすぎるこれの尾崎くんカマスぞという感じ、ヘッズという感じでやられていたのに、"隠さずに解き放て"で手で顔を覆い、そして明かすという振りがスリリングな色気があってヤバすぎて叫んだ。隠さずに解き放て崎匠海さん!!!! あと髙牧コレオ最高すぎ。3Dがアニメなら双子の敵キャラポジションでしょこの髙牧は(どゆこと?)
・Roketeerのサビのコレオが変わってたの、使いこんだ革製品をリメイクしたみたいで本当に輝きがあった。そこからのMOREはボルテージ最高潮でギラギラキラッキラのとても消えそうにないけど懸けている眩い星でINIが大好きだー!になった。フェンたくの歌い方のアレンジ、ブチアゲ!
・アンコールのFANFARE始まり、アゲアゲロックンロールでドロザって名盤だよね〜と感謝し祈る時間が始まる。
・あと雄大まじで輝いてた。透明感凄かった。真珠?
・これはTwitterにも書いたのですが、私の入った公演の最後の挨拶でフェンファンが「今年は馬車馬のように働くと宣言したら、様々なお仕事をいただくことができて、でもたまに自分のキャパを超えているのではないかと不安になる時がある。そんな時にライブとかでMINIの皆さんと会うことで自信を貰えて頑張れる」って言ってくれたりとか、りーくんが「いつも街中でMINIに遭遇しないかなって思ってる」って言ってくれたりとかして、そんなのさあ、私たちだってあらゆる媒体で見るINIの皆の姿に勇気を貰ったり励まされたりして頑張れることいっぱいあるし、INIに会えないかなって思ってるのに、それをアイドルの側もそんな風に思ってくれてるのって、両想いじゃんね〜♪♪になって嬉しかった。ちなみに推しであるところの尾崎匠海さんはこの日「普段なかなか大声出さないと思うので、ストレスを俺にぶつけてください!受け止めるから✨️」って言って、尾崎ーーー!って叫んだら「トイレに捨てときますね✨️」って言われた♪♪
・HI-DI-HO、風が気持ちよく抜ける季節に牧場にいる時のような開放感と爽快感があるよね。
・INItializeってまじで思春期の深夜の良作アニメの最終回のEDを聴いている時のようなチャージされていく感覚があって、これで終わるのとか幸せすぎるよ〜!
■そうかつ
・強く感じたのは「セトリ、良……」と言うことだった。これは自分の好きな曲ばかり来たとかではなくて、その曲が持つ良さとか伝えたい世界観とかそのために配置された音の意図とか、ポテンシャルを引き出しきってパフォーマンスで魅せていく、凄まじい鍛錬と場数に裏打ちされた華の、全体を通して説得力のあるライブだったという意味です。本当になんか、曲の位置エネルギーみたいなやつ全部使ってた。
・その中でもWMDA、I'm a Dreamer、ONE NIGHT、3Dは背骨だった。がっちりこのツアー演目を支える見どころで、演出もそれを支えていた。
・INIさんは1、2年目とか、特に北海道のエスコンでそう思ったんだけど「これから死ぬんか?」みたいながむしゃらな鬼気迫るパフォーマンスだったんだけど、4年目にしてビロードみたいな黒曜石みたいな分厚い輝き、重さ、磨き上げのパフォーマンスという感じで、でっかくなったね……になった。
■そのた、じんせい
INIの革命三部作が始まってから、自分にとっての革命ってなんだろうってたびたび考えていた。
ここ最近色々あって、ツアー入ったその日の夜にそれも関係あって悪夢見て、ツアーの余韻の魔法は早々に消えてしまって悲しかった。でも、構成が良かったなっていい意味で殴られたような感触がじわじわ蘇っては、また重ねて思うことで実感が増していくという感じだった。
色々あったことの中には、簡単には解決できない社会問題に関するものも含まれていて、自分の理想が貫けないほど重い問題に負けたことがかなしかったのだと思う。さらに今、バックラッシュは吹き荒れに荒れ、バズばかり正しくて、理不尽に対して声を上げる方が糾弾されるのを見て、でもそれも仕方が無いのかもしれないみたいに諦めが浮かぶことが増えた。
そんなときも、INIさんが互いに、そしてこちらに差し出してくれる愛は降るばかりだった。心なんて無い方が、鈍感な方が強くなれるのかなって世界で、光陰激しい世界にいるのに心を捨てないでその揺らぎさえ使って共鳴して、私たちに届くように砕いてくれた愛をいつもくれる。革命三部作の曲たちは、いつも弱い方に立って共に在ろうとしてくれる。
そうやって頭と心を使ってくれること、それってほんとうのかしこさで、やさしさなんじゃないだろうか?
理不尽に抗って、行動を重ねてくれること、それこそが革命なんじゃないだろうか?
だから、それが響いたのなら、わたしも小さな革命を胸に抗っていこうと思えるのだ。まずは、草の根運動というか、勉強して知識をつけること、周りを小さく巻き込んでいくことから始めたいと思う。
タイプ:ゆうかんなひとに、わたしもなりたいからね!
いつも、負けることなく愛を貫いて、勇気を示してくれてありがとう。
2025.4 くりえいしょん!
普段は月記はnoteで書いているのだが、今月はもう出来事全てが好きなアイドルの話に繋がるのでこっちに投稿することにした!
・これは絶対に言わない方がかっこいいんだけど、常に感じたことを言語化して外の風にさらすことの快楽に勝てないから話すのですが、趣味の創作活動ーーつまり長編小説を書きはじめ、毎日疲労とともに「ガチ苦しい!楽しいけどさぁ!!それはそれとして普通に苦しい!!」になっており、作品を作ることの苦しみをINIの皆さんも感じておられる頃かな〜となてり。ツアーもうすぐだね!
・今まで逆に何してたん?という話なのだが、仕事でも創作活動でも「出したいアウトプットから逆算して、毎日の目標を立て実行していく」のを本格的にやっているのがほぼ初めてのこと。なぜなら、最高の不得意分野で避けてきたからです!これをやったことにより、明確にその日の目標ができて今は全体の何割の進捗か、今日はどこまで頑張らなければいけないかが認識できるようになったのですが(あたりまえ体操)、まあ計画通りにはいかなくて焦るし、疲労は濃くなっていくのに進捗は芳しくなかったりと、とにかく滅入る。アイエヌアイの皆さんも「この振り今日はここまでの完成度に持っていかないとヤバい。それでもまだ全体の何割しか進んでない…」とか思うことがあったりするのだろうか…
・仕事から帰ってきて毎日机にまた座り直しているのだが、毎日やるのってマジで肉体的にも精神的にも脳的にも(脳?)キッツイ…! 毎日練習や仕事をしているアイエヌアイさんにとっては何言ってんだ?って感じかもですが……別にやりたいことだし、楽しい瞬間もあるからやっているのだけど、疲れが脳の奥にこびりついてちょっとやそっとじゃとれない感じが毎日続く。てか全体の進捗の3割でこの疲労って、何かを間違えてるとしか思えないよォ〜
・小説はとにかく最後まで書いて書き直しで何とかすることができるのだが、それでも狙って書かなきゃ的には当たらないわけだし、その時のベストを尽くすもしくはベターに持っていくために、一挙手一投足を"本気"でやる必要があり、気力を使う。でもみんなそうだよね……うん……
・書き進めている途中で「そもそも最初のコンセプトからダメなんじゃね?」「ニッチすぎて誰も面白いと思わないんじゃね?」みたいな、根本的な不安に立ち戻ってしまうこと、あるある……小説はプロットという設計図を立ててから書き始めるわけだけど、プロットがもうダメなのでは? ってなるため、こちらに関しては「とにかくダメでも書き上げることで経験値を積もう!」という発想で不安の声を消してる。でもこれがさあ、アイドルだったらもっと絶対に売れなきゃいけないというプレッシャーがある訳で本当に計り知れないよね……いいコンセプトって生まれた時点でもう勝てること分かるのかな? わから〜ん!
・6時間以上かけて考えたワンシーンの展開がたったの1000字にしかならないことの絶望やばい。でもアイドルの皆さんは3分ほどの曲のために何十時間も練習するわけなので、芸術って凝縮であり上澄みをとってるんだな……
・やってみて分かること多すぎん? 別に表現者と享受者のどっちが偉いみたいな話をしたい訳ではなく(というかどの場面でもみんな何かの表現者だし享受者)、作り上げられたその表現を努力されたものだから批評無く受け取るみたいなことでもなく。でもそれにしたってやらないと分からないことが多すぎて「怖!!!」になるよ。一つだけ言えるのは、皆もこんな道を歩んでいることを知れないより苦しむ方がずっと良かったということですね。
【読んだ本】

・大学時代精神分析専攻だったのだけど、創作につまって「これヒントになるかも」とたまたま買った書籍が大学時代にも読んでいた精神分析を援用する精神科医の人で、何やっててもワシはここに戻ってくるのウケるな…になった。そのことを後輩にも話したら「人生のテーマとも言える学問に大学生の時点で会えたというのはよく考えるとすごいことなのかも」って言われて、ラッキーなのかもなあとなった。
・書いてる作品のトーンを揃えることに脳がリソースを振ってるので、読んだことの無い小説を読むと文体が影響して崩れることを予期した脳が止めてる。書き終わったら思いっきり読みたいな〜
【その他】
・尾崎匠海さんが10代で上京したという情報が判明し、いっぽう俺は20代後半になってようやく実家を出たわけで…になって凹んだ。尾崎くんにも色々あったと思うのだけど、現実と相対して戦って強くなったんだろうなあと思い、またいっぽう私は虚弱精神体質の己に振り回されてばっかりで、ようやく今になって現実と相対するというフェーズに入った感じで、そりゃ貫禄がちげーぜ……になった。そのことをお友達のFさんに話したら「人の人生の道は色々ですよ。大事なのは推しと自分が通過する駅が重なって同じだった一瞬があるということです」って言ってくれて、そ、そう〜!になった。

・「ミーアイの新譜がいい!」という内容がTLに複数回流れてきたので聴いたらハチャメチャに良くてエンリピしてる。Million stars、いい意味でtommyHeavenlyみがあって最高……
・親愛なる尾崎匠海さんにききたいこと:過去の失敗や仕事でミスしたこと、黒歴史などが脳内に蘇った時に、前までは「しんじゃえしんじゃえしんじゃえ!」って脳内で反射的に唱えたり、なんなら独り言で口に出したりしていたのだけど、ここ1年は「あいしてるよ〜」になりました。つまり(死にた)って思ったら「あいしてるよ〜」と空中に向かって口に出しているということです。この変化を私は「死に向かっていたものがこの世への祝福みたいに変化して、生き延びたことで世界を愛せるようになったんだな✨️」と前向きに捉えていたのですが、これを後輩に話したら「オカルト的に危ないと思いますよ」って言われてショックでした。ぼくはお化けのたぐいが、かなりこわい……今のところ、フォロワー0フォロー0の鍵アカウントでそういう時は「あいしてるよ〜」と呟いて口には出さないようにし始めたのですが、尾崎さんは前にどこかでコメントしていた時は幽霊にも好かれていたみたいで、こんなときどうしますか?(どういう角度からの質問?)
・とある日曜の夜、後輩が「唐揚げ揚げるけど来ます?」って言ってくれて安売りしてたピーマンで作った塩青椒肉絲を持って行ってご相伴にあずかった。帰る時に「お弁当どうする感じですか?唐揚げ持っていきます?」って4個ぐらいお土産に包んでくれて、私はそれをお弁当箱に詰めてささやかな愛でしかない弁当ができて乗り越えられた月曜日があったこと!
・親友のKさんと4月の2週目にもう散ってるかもだけどお花見をしようという話になった。お昼にスペアリブを食べて雨のなか公園へ向かったらもう完全に葉桜で、満開の頃を想像して脳内で補完しながらの花見になったのだが、ただの葉っぱを見上げて満開だったころをわざわざ想像する花見をそれでも君とならしたいのさと思える友達がいるって、いいなあと思った。
・今月のヒットメニューはナスとピーマンと鶏もも肉のドライカレーと、夏野菜ミネストローネ。ミネストローネはセロリ、ピーマン、玉ねぎ、ソーセージ、だし汁で作ったのだけどそれだけで美味しくなって嬉しかった〜!
と、いうことで恐らく尾崎くんの誕生日あたりまで続く創作を苦しみながらも、何とかやり遂げたいぞ…!
とあるヒーローの魔法ー『幻想』とソロコンによせてー
※本記事は尾崎匠海ラポスタソロ公演『CAFÉ』のネタバレを含みます。
- 救いと罪悪感
- シアターGロッソという箱
- 幻想の解釈
- 誰にも言えない予想していたソロコン
- 開幕!
- 幾億光年
- 手紙と『手紙』
- 幻想を書いた思い
- ヒーローの魔法
1.救いと罪悪感
アイドルが突然人生の“目の前に”現れてくれて、辛い局面で手をひいて別の世界に連れ出してくれるように救ってくれることは、ある。どうしようもなく、ある。
それは直接会うだけでなく、パフォーマンスの動画を見たり、ライブのコメントだったり、メールでの言葉だったり、目の前にいないくても“目の前に現れて”くれることが、ある。
かくいうわたしもそうだったから。すきなひとであるところの尾崎匠海さんは、人生で物凄くきつい気持ちになっていたときに出逢ってくれて、わたしの魂のありかを、魂を自由にそよがせることができる世界を教えてくれた。そこからずっと、彼の表現や言葉にたくさんのものをもらっていて、インスタライブでのたったのひとことをお守りみたいに握りしめたり、ある日の長文のプラメでくれたとある文章に一時間ほど声をあげて嗚咽するのが止まらなかったりしたこともある。
最近も、あった。大阪の野外でファンコンサートのあった11月3日の挨拶のときのコメントで、「自分らしく生きてね」と言ってくれたこと。わたしはそのとき人生の選択をしなければいけない局面にいて、大好きな地でそよがせていた自分の魂を殺す道を選ぼうとしていた。でも、まさにその日にレポでこのあいさつがあったことを見て、平塚の浜辺を泣きながら歩いた。なんでよりによってこの日に? と思った。そういう、日蝕みたいに尾崎くんの行動やくれた言葉がわたしの人生のとある局面と噛み合って、呼応することはいままでにもあった。そういう魔法をここぞというときに、ふとくれる人だった。だから、尾崎くんがわたしのアイドルで大好きだった。
嬉しくて、それを言葉にしてきた。だけど、最近思うようになったことがある。
尾崎くんが伝えてくれたことは、尾崎くんが尾崎くんの人生のとある文脈と背景から思うところがあって伝えてくれたわけで、その意図がわからないのに勝手に解釈して受け取っていいのかな?
わたしはその意図を自分の都合の良いように捻じ曲げて受け取って、「救われた」と言っているだけではないのかな?
上記のような疑問がわたしの中で頭をもたげていて、尾崎くんに自分はなんと伝えたらいいのか分からなくなっていた。
2.シアターGロッソという箱
さて、そんな中でJO1とINIのメンバーがソロコンサートを行うという情報が解禁された。どきどきしながら見ていくと、尾崎くんはシアターGロッソで公演を行うということを知った。
シアターGロッソ!
ニチアサのオタクとしては、あまりにも聞いたことのある会場名だった。
わたしの家庭は父がヒーローものを見る家庭で、物心ついたときから休日の朝は仮面ライダーや戦隊もの、ウルトラマンがテレビで流れている中で育った。子ども向けのヒーローものは、おためごかしではなくその時代の子ども像が入念に調査されているのがうかがえる。そこに向かって「この世界には希望があるんだよ!」というメッセージを、その年に選択されたモチーフに絡めて、ひとつひとつ丁寧に作り上げられているから、大人になっても台詞一つが純度高く光っていて泣きそうになってしまう。最近ではドンブラザーズの感想を友達と語り合い、キングオージャーをメイクをしながら見て泣いてメイクがくずれるなどしていた。
シアターGロッソの話に戻ろう。その戦隊モノがヒーローショーをやっているのが、まさしくシアターGロッソという会場だ。番組の途中で流れるCMで「シアターGロッソで、僕と握手!」と言いながらその年の赤レンジャーが子どもと握手している映像と音声が流れるので、ニチアサオタクの脳には刷り込まれている会場名だった。
ヒーローショーをやっている会場で、尾崎くんがソロコンをする!
わたしはその時点でもう嬉しかった。尾崎くんはずっと「皆んなを幸せにする」「皆んなの支えになりたい」と掲げているキラキラアイドル担当だから、まさにヒーローでぴったりだと思った。
公演名は『CAFE』らしく、尾崎くんがカフェをオープンするらしい。わたしはわくわくしながら続報を待った。
3.幻想とa‘
おみくじで大吉が出たのだが、今年の運を全部つかったというような塩梅でなんとかソロコンに当選し、どんな公演になるか楽しみにしていた時、それは来た。
“あなたと会えるこの瞬間は 当たり前ではない”
“この光景を大切に心にしまっていたい”
最初はカバー曲か……? と思っていたけど、このサビを聞いた瞬間にこの曲は絶対に絶対に尾崎くんがつくってくれた曲だと確信した。“あなたに会える”って、アイドルとファンがステージの上と客席で会うその日の光景を歌っているんだよね。絶対にそう。題名が『幻想』という、一見冷たい意味を彷彿とさせる言葉をそれでも掲げてつけたところも大好きで、わたしは第一印象では「尾崎くんは“幻想”と書いて、“アイドル”と読むんだ」という風に解釈した。
何度も、でも急がず大切に咀嚼したくなるような曲で、毎朝毎晩再生したり、約毎日フォロワーとDMで考えられる解釈を語り合ったりした。冒頭にはグラスに水を注がれて、氷が溶けてかしいだ時のような音が入っていたり、最後にはカフェのドアが開いたときのベルのような音が入ったりしていて、コンセプトのCAFÉを想像させた。どうやって公演と繋がるのか楽しみだった。MVの映像ではアパートの一室を映していたが、大きめの植物がたくさんその部屋に並んでいるのを見て、物言わぬ植物が大衆に何を言われても舞台に立ち続けるしかない表舞台の人の姿に見えるなと思ったり、じっくりと我々が見えないところで表現を磨き育て蓄えるアーティスト性のようなものも感じたりした。
その中でも、やっぱり『幻想』という題名の解釈はいくらしても尽きることがないくらいだった。わたしははじめ、「尾崎くんは“幻想”と書いて、“アイドル”と読むんだ」と思ったけど、フォロワーが「私たちが見ているのは、アイドルの匠海くんを通じて私たちが作り上げている“理想像”としての匠海くんであり、幻想」という解釈を聞いて、わ、わかる……ともなった。わたしはa’という話を聞いたことがあった。わたしたちが見ているのは、アイドルそのもののaではなく、各々がまなざして投影したa’なんだよ、という考え方。ともすれば、わたしが尾崎くんに救いを見出すのも、勝手に解釈したa‘がもたらすものだ。
でも。それでも、と思う。
尾崎くんが自作曲のこの曲のタイトルに『幻想』とつけたのは、絶対に「お前らの見てるのって幻想なんだぜ」ってわたしたちをあざ笑うためじゃない。そういう人では絶対にない。誰よりも真剣にアイドルについて哲学を打ち立てている尾崎くんだ。きっと、「幻想」がもたらす希望を誰よりも信じているからだ。その確信があった。
コンセプトのカフェを想像させるような音が入っているところからも、ソロコンでこの曲を尾崎くんはやるだろう。わたしは当日の『幻想』を聞いて、解釈をまた深めようと思った。
4.誰にも言えない予想していたソロコン
『僕自身の二面性というか 表に立っている自分と プライベートの自分というものを 二つ見せれたら』
ソロコン当日が迫ってきて、どんな内容になるか予想をしたくなる時勢、わたしには誰にも言えない「わたしのかんがえるおざきたくみさんのソロコン」があった。
それは、「コンセプトはCAFÉだけど、キラキラアイドルとしてキメッキメのバチバチアイドルステージをする尾崎くんと、ほんわかとカフェ店員をしたりお客さんとして来ていたりする尾崎くんの姿の両方が見える公演だったら、死ぬな~♪」だった。
事務所の公式動画で以前尾崎くんが冒頭のような発言をしていたのもあって考えていたものだったが、「いや……まさかね笑笑」という思いの方が強かった。だって、シアターGロッソの公演終了時間は22時と決まっているらしいから、多分21時からやる尾崎くんの公演はたったの1時間だし、そんな時間はないだろうな。
「でも、ファンが見たいものを分かってくれている人なんですよね?」
最近できた、尾崎くんのことを語っている友達にソロコンのその誰にも言えない予想を話した時、その友達は言ってくれた。
「やってくれるんじゃないですか?」
「いや笑笑まさか笑笑」
わたしは「心の底から願っていたことが叶わなかったら本当にかなしいから」という自己防衛反応でその予測がかなうと思わないようにしていたから、笑ってごまかしていた。
そして当日、“それ”はきた。
5.開幕!
いよいよ当日。開園時間になり、かかっていた音楽が鳴りやみ暗転した。客席からステージの上を一心に見つめる。
ステージの後方中心にスクリーンがあり、そこに映像が映し出される。
『ジジジジジ ジジジジジ』
流れてきたのはCAFÉを彷彿とさせる映像——ではなく、スパークするような、緑色の文字で描かれるコードが次々と映るような、衝撃!というような感じのイメージ映像だった。あれ? CAFÉは? そう思っていると、ステージ後方中央にハの字型に並ぶバックダンサーと中央にシルエットが現れる。歓声が上がった。
照明が当たる。そこには白の王子様系衣装を着てギラギラに歌って踊る尾崎くんがいた。
CAFÉじゃない! 聞いてないよ! 彼の古巣エーベックスを想像させるような、イケイケバッチバチのちょっとセクシーさもあるような曲調だった。踊りながらなのに、歌がぶれてなくて、大好きな歌って踊れる尾崎くんだなと思った。多分一曲目だったと思うのだけど、「そのままついてきて、いくよ!」という煽りをいれていて、パフォのときは強気で強引にこちらを奪っていく尾崎くんがいてこれこれ、これだよね~となった。会場は沸いた。
一曲目が終わると、次の曲はサビをみんなで盛り上げてほしいと声出しをお願いして煽っていく尾崎くん。二曲目もアップテンポの曲で、ラップも入っていた。ヘッズ尾崎くんだ……。吐息を入れる感じのパートもあって、悲鳴が上がっていた。ギラギラアイドル尾崎匠海くん。尾崎くんが見せたい尾崎くんと、わたしが見たかった尾崎くんが一致していた。そう、誰にも言えなかった予想の「バチバチアイドル尾崎くんも見たい」という欲望が叶ってしまった瞬間だった。
二曲目が終わり、暗転してはけていく尾崎くん。みんな思っていたと思う。
待って。そりゃ見たかった尾崎くんだけど、CAFÉってなんだったの?
そうしているうちにVCRが流れ出す。木々のある階段をのぼっていくと辿り着く、僻地にありそうな落ち着いた雰囲気のカフェが映される。そこを昇っていく人影があり、エプロンを身に着けた。今より明るい茶髪でふわふわにまかれた髪の尾崎くんが映る。そうして準備されたカフェに、INIのペンライトを持った女性客が二人現れる。MINIきとるやん、と思ってちょっと笑った。
『INI、かっこよかったよね!』
『尾崎匠海くん、かっこいい。えくぼがいい!』
席に着いて話し始める女性が話しているところに、尾崎くんがコーヒーを入れてやってくる。
『本人ですよね?』
『いや、違いますよ』
何気ない感じで誤魔化して受け流そうとする尾崎くん。どうやらアイドルであることは隠してカフェをやっているらしかった。何度も「だってえくぼありますよね?」とか聞かれるけど、しらを切りとおす尾崎くん。尾崎くんの演技ってコメディシーンの間や、何気なく聞こえる言い方がいいというのがあると思うのだけど、ここでもそれが出ていて「全く知らないです~」みたいに言ってみせる演技が好きだった。会場から笑い声があがる。誤魔化しきってその場を離れて、別のお客さんの注文をとりにいく尾崎くん。でも、実は本当はそのアイドルだからとほほえんでいて……みたいなカットが映し出されてやっぱそうじゃん! となる演出がされていた。そして、明転する。
「呼んだ? あれ、誰かいてここでなんかやってたよね? あれ、誰なんだろうね?」
カフェエプロンを着た実物の尾崎くんが舞台上に現れる。「髪型が違う!」という悲鳴があがった。どうやらさっきのバチバチアイドルのヘアセットから、ストレートヘアに髪型もチェンジしてきたらしかった。恐ろしいまでのこだわりと観客のツボを押さえている。そして、実際に現れた尾崎くんも「さっきまでの人は知らない人」のていでいて、ライブの演出という感じのストーリーがあって楽しかった。
「今日はラフな感じでいきたいから。みんなと喋りたい。俺の好きなものを知ってほしい。この舞台上でも俺の好きなカフェの感じを再現してみました」
舞台上にはカウンターや植物のセットが置かれていた。「コーヒーもあるから飲んじゃおうと思って」と、カップにコーヒーを注ぐ尾崎くん。がんばれー! という声が上がって「それくらいできるわ!」と応える尾崎くんがいて笑った。「後ろも盛り上がってる?」とちょいちょい聞いてくれて、後ろの方の席にいたわたしも含め、ペンライトと歓声で応えた。
コーヒーを飲みながらにこやかに尾崎くんは話した。
「平和だね。ラポスタは平和が一番♪」
わたしは尾崎くんが愛嬌を武器に強引にこちらに約束させる、かわいさを資本としてしまうアイドルだな~となる瞬間が好きだったので笑った。
舞台上でたくさんしゃべってくれる尾崎くんの姿を見て、あの少しかすれているけど張りのある声を聞いて「この人ほんとうにいいひとなんだろうな」みたいな気持ちになった(シンプル感情)。引っ張ってくれて、芯の強さを感じさせる気のいい青年という感じで、でもたしかに尾崎くんって本当はなにを考えているか分からないと言われることもあるから、こういう姿はめずらしいなと思った。
6.リクエスト曲ランキング!
続いては、リクエストを募ったカバー曲を、色々な事情の関係でもっと歌いたかったけれど一曲だけ披露するという話になった。
発表されたランキングは以下だった。
5位:『虹』二宮和也
4位:『風神』Vaundy
3位:『ウェディング』音田雅則
2位:『One Love』嵐
「早く次いけって感じ?」と言いながらも、「いっぱいみんなと喋りたいからさ!」とランキングが発表されると一曲一曲、想いや背景を語ってくれる尾崎くん。そしてついに一位が発表される。
1位:『幾億光年』
「アイドルラジオでAメロだけ披露した時に、好評だったみたいで……」と尾崎くんは話し、『幾億光年』を披露することとなった。「この曲高いよ~~」と泣き言を言いながら、カフェ店員の服装のまま歌い出す。
いや、上手いからね?
ピッチにビタビタにあてながら、あの空気の織り混ざった声で表現に昇華して歌う尾崎くんの歌声に聞き惚れる時間だった。さっきまで本当にラフな感じだったのに突然百選錬磨のシンガーにスイッチが切り替わってて技巧をみせていて、歌声だけで空気感を変えてしまうのがステージの上の人だなあと思った。ライティングがオレンジがかった光の色になって、尾崎くんメンカラがオレンジだけれど、その切ないような声が、暮れて終わっていく二度とない一日の切ない時間と重なって、すごく似合ってるなと今さら思った。
「むずいよお」
終わってからも泣き言を言ってたけど、うまかったからね?
7.手紙と『手紙』
「文字書くの苦手だけど、文字書くの苦手だけど? 文章を書くの得意じゃないんだけど、手紙を書いてきました!」
ランキングのコーナーが終わって、尾崎くんは便せんを取り出した。「ちょっと紙がちっちゃくて」とわたわたしながらも読み上げてくれた。
応援してくれることへのお礼、ステージの上に立って届けることができる環境に感謝していること、みんなの時間をINIにつかってくれてありがとうということ……読み上げている途中、どんどん声をつまらせていて、「皆んなには幸せでいてほしいです」のところで一番泣きそうになっていた。ひとの幸せを強く願うところで一番感情がこもってしまうというのが、すごいひとだなあ、と思った。特に印象に残ったのが、「活動する中で自分の奥底がネガティブなことに気づいたからこそ、皆んなにはポジティブに前向きにいてほしいです」と言っていたことだ。尾崎くんは明るくいようとする人だけど、自分がネガティブになっているときに物凄く辛かったから、そういう辛い思いをしてほしくなくて、考えすぎて悪い方向にいってほしくなくて、だからこそ他の人に前向きな気持ちでいる瞬間が多くあってほしいと思うのかなと、想いの核にある部分を知ることができた気がして嬉しかった。
手紙を読み終わると、「路上ライブをしていたときも歌っていて、今歌ったらどんな気持ちになるのかと思って」と、HYの『手紙』を披露してくれることになった。サビのファルセットが空気のように清廉さがあるのにマイクによく当たっていて綺麗で、大好きな尾崎くんの歌い方だと思った。サビの最後の「振り向きもしないまま去っていく君の背中を 冷たい日が差すよ」の置きざまが、すっと本当に青色の陽がすっと差し込んだようで、物語みたいに歌う人だなと思った。
8.幻想を書いた思い
「早いもので、次の曲が最後になるんですけど」
会場からえ~と名残惜しそうな声が上がった。楽しい時間はあっという間だ。「それぞれの人生に重ねて聴いてくれたらいいんですけど、」という前置きをして、尾崎くんは作詞作曲した『幻想』について背景を語ってくれた。
曲を、それぞれの人生に重ねて聴くことを許してくれるのをやさしいと思った。でも、尾崎くんの想いも聞きたかったから、話してくれることが嬉しかった。
自分が生きるのに絶望していたことがあったから、そんな時にも希望はあるんだよと伝えたかったこと、冒頭で二曲オリジナル曲をやったが、『幻想』が一番初めにできた曲だったこと、自分の過去のことも書く必要がでてきたこと……。
「それぞれの希望を」
「俺を支えにしていいから」
そうやって尾崎くんは言ってくれた。そして、最後の曲の『幻想』が始まる。
MVの冒頭にもあった、グラスの氷がかしぐような音は本番でも入っていた。その音が鳴った瞬間、薄青のピンスポがすっと尾崎くんにあたり、まさしくひんやりとしたグラスを想像させた。
ステージの上と客席で、アイドルとファンは逢う。“この瞬間”が、ここにあった。“あなたにどんなことがあっても 僕は君の味方だから今は一緒にいよう”が、本当に言葉の意味がひとかけらも損なわれず、ピントがぴたっと合った映像のようにまっすぐに届いた。「伝えること」を主眼に置いてパフォーマンスをする尾崎くんらしさが今日も健在で嬉しかった。
最後の曲が終わってしまう。尾崎くんが「帰りたくねー」と言いながら、一番最初に出てきたステージの後方中央へとなんとか歩いていく。わたしたちは手を振った。
本当に、終わってしまった。
9.ヒーローの秘密の魔法
『俺を支えにしていいから』
シアターGロッソを後にした帰り道、『幻想』への想いを語ってそう伝えてくれた尾崎くんの言葉を繰り返し反芻した。言葉に書き出してしまえば簡単に見えるけど、それを言う尾崎くんは背負う覚悟を決めている人のそれだった。
「それぞれの場所でがんばろうね」と尾崎くんはよく言ってくれる。わたしはこの言葉が大好きだった。
冒頭で言っていた、読んで一時間嗚咽が止まらなかったプラメの文章について、友達に話したことがある。友達のKさんは、それを聞いてこう言ってくれた。
「きっと、尾崎くんは本当に人を助けたいという思いが強いから、それぞれの人生で辛いことがあったときに、その人のもとに現れてあげたいんだね」
尾崎くんを応援するようになって知った。アイドルとファンは、本当にお互いがそれぞれ辛い時に、リアルタイムで会うことはできない。会える日を待ちわびて、辛い時をなんとかした先で会うしかない。そのことがもう分かっていた。
そうか。それでも、尾崎くんは現れてあげたいと思ってくれているのかもしれない。
だとしたら。
わたしは最近、尾崎くんの表現やくれた言葉に励まされたときに、自分の背景を勝手に絡めて救いを見出すことに、いいのかな? と思っていた。“辛い時にいつも救い出してくれる人”という理想像を重ねて、幻想を見出していることに、罪悪感を感じることもあった。
でも。
でも、ひょっとしたら、アイドルという職業をどこまでも追及している尾崎くんは、本当はそんなの百も承知なんじゃないかな?
承知の上で、本当に辛い時に実際には現れてあげられないけど、それぞれの人の人生の場所に希望として、自分が“目の前に現れて”あげられる魔法が、この世にあることを知っているのではないかな?
尾崎くんは、そういう“幻想”の力を信じている。それぞれの人生で出会う尾崎くんがわたしたちにとってとても大事なものであることを、分かってくれているのではないかということ、許してくれているのではないかということ。
それが「俺を支えにしていいから」という言葉が指すものではないのかな。
反則技みたいな、でもアイドルだからスペシャルオールオッケーな、a’の魔法。それを尾崎くんは知っていて、それを必殺技として使うヒーローなんじゃないかと思う。その魔法を、ただひとつ実現させる方法を、尾崎くんは痛いくらいに知っている。
魔法をつかうたったひとつの方法は、一心に打ち込んだ表現で、姿勢で、人の心を打つことだ。
わたしたちが見るものは、幻想なのかもしれない。それでも、尾崎くんがくれるものがあったからこそ、投影される希望の幻想だ。尾崎くんが魂を込めた表現をしてくれなかったら見えなかった幻想だ。
そうして、気づく。
もしかしたら、尾崎くんが見ているのも“会いに来てくれるファン”という幻想のわたしたちなのかな。だから、“そっと胸にしまって”おくなんて表現をしてくれたのかな。あなたが心の中で、理想の混ざったファンの姿を描いてくれて、それを掲げて頑張ってくれることがあるのかな。
だとしたら、なりたい。あなたの日々に現れるふとした希望に。
必殺技返しだね。もう知っている方法はただひとつ。
心をこめることだね。
選んで選んで選んで、選び抜いた言葉で、わたしはあなたがどんなふうにわたしの目の前に希望の光として現れてくれたのか、伝えることにする。
2025/2/2 追記:……というようなことを書いていたら、ラポスタ3日目で尾崎くんが「出逢ってくれてありがとうーー!」と曲の始まる前に叫んでくれた! 神アイドル♪
私の好きな私をくれたのはーINI FLIP THE CIRCLE 9/21ー
1.日記
※2からINI FLIP THE CIRCLE 9/21のネタバレを含みます。
ぎりぎりまでチケットが当たらなくて、あまりの当たらなさに当たったらラッキーくらいだったファンコンの、注釈席が最後の最後の先行で当たって運良く初日に入れることになった。
この日程で入りたいという拘りはなくて当たったのがそこという話なのだけど、初日に入るのって初めてでマジで何が起こるか誰も分からないのが改めてドキドキで、千秋楽間近もいいけど初日って…かなり良いかも…とその日までの平日を過ごした。いや、注釈席って今回初めてで、ググッたら柱の位置とかで見えない可能性があるのを知ってちょっとは凹んでいたけども。
当日、少し早めに桜木町駅に向かって角田光代『対岸の彼女』を電車の中で読んでいた続きを読み進めた。なんだか台詞が沁みるところがあってちょっと泣きそうだった。
会場に向かおうとすると風のあおりがすごくて、でも蒸し暑い!メール会員限定トレカはちょうど終了してしまって残念。グッズは並ばず買えた。とにかく暑いので開場時間にもう入ってしまうことにした。
そして席、3階席なのだけどとてもステージの上手側に近かった!正面からはもちろん見えないけど全体は見えるし、遮るものも無いしで嬉しかった!開演時間までまだ結構時間があったので『対岸の彼女』を読み進めて読み終えた。ラストにとても好きな小説になって、今日もうこの時点で最高なのにこれからINIにも会えるの?すご〜!になった。
とにかく、何も分からないものが始まるのでなんかこちらも緊張が凄かった。ゲームコーナーとかファン交流みたいなターンが多いのかな?でもメンバーが結構期待してて欲しいみたいなことを沢山言っていたから、絶対にMINIが好きな曲とか入れてくれるんだろうなとも思った。いやわからーん!初日ってドキドキがすごい!
音楽が大きくなって、はじまりの合図。緊張したままペンライトを振った。
2.
そして冒頭から度肝を抜かれるのである。
DILEMMAなのはイントロで分かったんだけど、えみんなどこから出てくるのと思っていたら、照明によって赤と白に照らされた天井から吊り下がる紐のしがらみに囚われたINIさんが!!いた!!囚われてる!!嘘でしょそんな変態的な演出で登場するの!?こんなことするの!?になってもう開始から最高の催しが始まったのを確信した。しかも木村柾哉さん短髪だしさあ!
尾崎くんのDILEMMAのフェイクが生で聴けてこの時点で元とったな…になった。早い。そのあとメドレーでMORE、Dramaticと続いて完全にMINIの好きな曲持ってきてて、開始冒頭から夢叶えたろかスペシャルの気持ちが強すぎる…!INIさん相変わらずMINIのこと知り尽くしてる…!になった。いぶし銀のLEGITくん、LOUD後の世界線で見るのその差異が渋くてイケてて美味しすぎる…になり、FANFAREくんでブチアゲ曲ね、分かった!になった。3階席なのに炎バズーカが熱くて、舞台上のみんなもっと熱いじゃんよ…に。そういうことを想像できる人でありたい…
VCRは相変わらず素敵なみんなを見せてくれるのだけど、縁を丸くあしらわれたスクリーンに映っていて、反転を繰り返すコインのようになデザインで翻り、FRIP THE CIRCLEの円環の構造を感じさせるモチーフで良かったなあ…。あと推し定点なんですけど尾崎くんがメガネをかけているパターンで演技人格を発露させていてとにかく凄み出したろかいになっており、あの、色気がすごくてすごかったです……
終わってからはBusterzのイントロが始まって、いやだからどんだけMINIの好きな曲用意してくるの?になっていたら舞台に電話ボックスが…!もたれたりして歌うのでミュージカルみたいでアガる。一人一人にスポットライトが当たっていくの良かったなあと思っていたら、ハット被ってのラインダンスブレイクが途中で挟まってこんなにやってくれるんですか!?になった。そして打ちかませ洸人からの西洸人のハットの使い方よ…この人VCRでも一際そうだったけれど本当に自分を魅せるの上手いなあ…
そしてBusterzが終わり、一人電話ボックスに入っていくしょごさん。どうやらMINIが落とし穴に落ちたらしい。そんなギャグ的アクシデントに見舞われてるんだってなって微笑ましくなっていたら舞台装置柵越しのCall119が始まりそういうことねー!になった。りひろむ&たじたくのブチ切れパートに今日もボルテージが上がり、Callってホントいいよね…になった。
てかここまでの全ての流れに驚愕しすぎてペンライト全然リズムに合わせて振れてないからね。恐ろしく遅いたどたどしい振り子のようなペースになってた。
10THINGSとTELEVISIONがトロッコ曲なの、分かりすぎる〜になってた。上階からだったけどみんなの顔がはっきり見えて、光ってた……尾崎くん近くの階下に来たとき背中向けてたんだけど絶対に細いじゃんよ〜になった。アイドル!という感じの演出でファンコンに来たんだなー!になった。
秋口に聴くMoment、過ぎ去ったら全てが愛おしい夏の思い出みたいでセパレートして踊っていくみんなにスポットライトが当たっていく演出含めて爽やかでエモーショナルな気分に。そして3人の姿がステージに現れたと思ったらおざたかまきでWhatever happensが始まって、薄水色のライティングと段差のついたステージングで歌うのが舞台のようで、物語の主題歌という点が際立っていて大好きだった。雄大のあのふわふわの歌声、最高だな〜。
Brighter、もうシンプルに曲聴きながらの後ろの映像に感動して思惑通りの人になってた。あの炎のような色のライティングで生歌で力強く歌うみんながいて、儚さより火を灯すという強さが出たBrighterが特別でよかった。
3.
vcrが始まって、太陽組と月組で分かれるってなってもうそんなの嫌いなオタクいないじゃんよ〜〜!になり、ジリジリした。所属するメンバーが映されていって、うん……分かる……その組み分け分かんの……になり、改めてオタクのツボというツボを突いてくるファンコンが恐ろしかったよ。
それでさ、柾哉さん・京ちゃん・たけちー・雄大・尾崎くんの太陽組のBREATHが出てきて曲流れ始めた途端にやっぱそうだよねー!っていう聞いたことないキラキラ爽やかソングで。それぞれ一人ずつパートを歌い繋いでいって、クローズアップされるのやっぱり嬉しいなってなって、大尊が交互にくるところがめちゃくちゃ良くて、でも頭の端にまだ来てない人いる……まだ来てない人いる……まだ来ていないということはいずれ来るということで……になってたら、そう満を持して1サビで尾崎匠海さんどセンターに登場してヒーーーてなった。その瞬間にもうギュインギュインに全体にバフをかけるようなギアが入ってくのが分かって、曲のキラキラ成分が何倍にもなって弾けてばちばちにかがやいていた……
月組は西くん・りーくん・たじ・迅ちゃん・ろむちゃんの布陣。ビターソルトなポップコーンのようなRapが続いて、ここでも満を持してのフェンろむのボーカルが入り、その冷えと艶々さが甘美だった。配置完璧。迅ちゃんが輝いてたな……腕を振って走るような振りが印象的だった。
そこから太陽と月が衝突し、Rocketeerになったの流れがうますぎる。
4.
フロイニコーナーからの曲振りという形でパフォーマンスが披露されるのが、立体版のラジオという感じで良かった。Dirty shoes Swag、テーマパークみたいなサウンドが大好きなんだけど、"人を羨むより focusを自分へと"、"まずは自分自身を愛すること じゃなきゃ誰だって愛せないからさ"の歌詞にまだそう思えない煮え切らない自分がいる……でも!このファンコンのこのタイミングで聴いた時は、なんのひねくれもなく歌声と歌詞がすっと届いた!このからくりの秘密は大切だからまた後で話すことにする。
そしてMANIAC、まさか過ぎて大興奮。MANIACの尾崎くんマジで憑依系だった好き。チッケム滅茶苦茶見てるよ…
「あと2曲です」って言われてウォキトキとBOMBARDAくんだったのも、アンコール曲がキリパとYummyなの、MINIのこと分かっていすぎで。そして1番最後の曲がT-shirtなの、そんなのもうメッセージでラブレターじゃん!!セトリってこんな風に愛を伝えることができるんだね。
5.
そんな訳で楽しすぎて秒で終わって記憶が爆散してるとこ多数で、1回しかいけないのがさびしくて、でも初日に入れたのが本当に嬉しいファンコンだった。
なんでなりたいの星の下に生まれて他人に憧れすぎてしまうわたしがDirty shoes Swagの"人を羨むよりfocusを自分へと"の歌詞を"まずは自分自身を愛すること"という歌詞を今日は素直に受け止められたのか、このコンサートを通じてわかった気がした。それは、INIが他に何も構わないほどにMINIのための演出や曲で埋めつくしてくれて、極めつけは"僕と君はPerfect pair バッチリ着こなすT-shirtみたい"っていう曲を贈ってくれて、え、困るほど愛されているなって感じざるを得ないくらいの、そういうもので満ちていたコンサートだったからだ。
わたしは尾崎くんに出会ったときから、INIを好きでいる自分の部分は特別で、その時の自分は魂の芯から一番自由で大好きな自分だ。尾崎くんに魂の自由を教えてもらったから、パブロフの犬みたいにINIと会うことと私の魂の自由は癒着してて、もう自由じゃない魂を殺して生きられないほどに。
そんなINIに今日会えて、たくさんのやり方で愛を伝えてくれたから、わたしは自分の好きな自分でいられたわけで、自分を愛せたんだ。だから、あの歌詞を受け取れた瞬間があったんだ。
なーんだ、やっぱり始まりは君たちじゃん。
HANA_花とLOUDの話をする
1 HANA_花
1-0.花とは何か
“本当の君の姿を Bloom!”
INI 5th singleのタイトル曲は『HANA_花』だった。わたしはこの曲にちょっと特別に思い入れがあって、それゆえこのカムバ期間の広告が下北沢と渋谷に向かう電車・東横線内に出されたことがとても嬉しかったことを、『KING OF PRISM~Shiny Seven Stars~』の第七話を引いて、言葉にしてみようと思う。
1-1.スッスッスがくれた夏
“心の花を咲かせましょう あなた色の花を”
“みんなと違うことを恐れないで 小さくてもいい、綺麗な色じゃなくてもいい”
“私、あなたのことが大好き”
『KING OF PRISM~Shiny Seven Stars~』第七話より
『KING OF PRISM』-通称キンプリ。テレビアニメ『プリティーリズム・レインボーライブ』の公式スピンオフ作品で、応援上映という上映方法を広めた劇場版アニメ作品である。この作品世界では「プリズムショー」という、スケートとアイドルステージが掛け合わさったショーがあり、そのパフォーマーである「プリズムスター」を目指す少年たちの姿を描いた物語だ。『KING OF PRISM~Shiny Seven Stars~』は劇場版の後の時系列で全12話のアニメ作品であり、エーデルローズという事務所に所属する七人の新入生たちが登場し、各話で各々の葛藤とそれが昇華されるステージにフォーカスされる作品となっている。
概要はなんとか冷静に書いたのだが、早い話が私は昨年の夏休みにこのアニメを幼馴染に勧められ、最後には号泣しながら完走し、泣きながらガストで熱弁するオタクに仕上がるくらいに衝撃を受けた。忘れられない夏ってこの年からも作れるんだと思った。その中でも特に印象に残ったものの一つに(いや、ぜんぶなんだけど)冒頭で引用した七話の西園寺レオくんの台詞がある。ここからはネタバレを含むので、読むにあたってご承知おきいただきたい。なんかほんと、私の要約より本編の方があたりまえだけど最高だからさ…機会があればぜひチェックしてください。あとこの話ブログで二回目で恐縮です。
西園寺レオくんは見た目もかわいらしく、本人もかわいいものが大好きな男の子だ。小さな頃からかわいいものに囲まれて育ってきたためそれが自然だったが、小学五年生のときに男子にも女子にも敬遠されいじめられた過去があった。このいじめの描写が本当になまなましいのだが、そんなわけで家族から心配され、双子の姉の前ではかわいい姿ではなくかっこいい姿を見せて安心されるようにふるまっていた。
だが、双子の姉は故郷の北海道に帰ることを検討しており、レオのことを心配して一緒に地元に帰らないかと提案する。このままここに残るか、地元に帰るか迷っていたレオが決意し見せたステージは……?
そのステージの中でレオはこう言うのだ。もう一度引用する。
“心の花を咲かせましょう あなた色の花を”
“みんなと違うことを恐れないで 小さくてもいい、綺麗な色じゃなくてもいい”
“私、あなたのことが大好き”
私はこの台詞を本当にすごいと思っている。上手くなくてもいいから、あなたが表したあなたを“大好き”と肯定する力強さ。そして多分、レオ自身がレオ自身のなりたい姿でスターとしてステージに立つことも、見ている“みんなと違う”誰かを“この世にいていい”と肯定することなのだと思う。これは広く言えばありのままのあなたを咲かせてということで、あえて大仰に言うのだけれど、セクシュアリティの話とかにも繋がると思う。
私は「ここで言う花って、なんだろう」とずっと考えていた。理解する前に台詞が胸に迫って、口の中でとなえると泣いてしまう。私は答えを出せないまま、ただ暗唱して握りしめていた。
1-2 渋谷と下北沢
十月のある日、私は『HANA_花』が収録されたINI 5th single『TAG ME』の広告を見に下北沢へ向かっていた。途中、渋谷方面に向かうため乗っていた東急東横線の車内吊り下げ広告にも『TAG ME』があって、ワクワクしたのを覚えている。そう言えば、ブルーピリオドで読んだけれど、渋谷は文化の街としての歴史があったはずだった。
渋谷が若者の街として脚光を浴びるようになったきっかけは1968年、セゾングループの西武百貨店が出店、1973年には渋谷PARCOができたことと言える。西部百貨店は初めての美術館入りの百貨店で、それまでアート作品は海外から輸入されるものだったが、日本のアート文化を西武は育てようとした。また、西武はパルコ劇場、ライブハウスのクラブクアトロいったエンターテイメント施設をオープンし、渋谷の街をショッピングに限らない文化発信の地として若者を呼び込もうとした。
そして下北沢。言わずと知れたサブカルチャーの街だ。古着屋や飲食店、ライブハウスが集積していて、「ファッションの街」「サブカルチャーの街」「演劇の街」として知られている。
ここでふと、西園寺レオの言っていた「花を咲かせる」という意味が分かったような気がした。それは、わたしは自分を表現するということなのではないかと思った。そして、その表現が——花たちが——文化になっていくということではないだろうか?
この二つの地点が『HANA_花』という楽曲を含んだ『TAG ME』広告の中心となったことは、偶然ではなくてメッセージだと思う。
1-3 花の意味
自分を表現する、というのは何か作品にならなくても、そうだと思う。こうなりたいと思った服を着ること、選んだ言葉を使うこと、選ばない振る舞いを決めていること。でも、いきなりそれを決め切るのは難しいし、私たちは自分にとっての脅威から身を守るために、自分を隠し続けたり、自分に嘘をついて本当は“こうありたくない”という振る舞いをしたりしなければいけないことがある。例えば、馬鹿にされるのがこわくて好きなものを聞かれたときにダミーの好きなものを答えるとか、好きになる人の性別が他の人とは違うから、それがばれないように日常的にアリバイ工作のような嘘をつき続けなければいけない状況とか。
『HANA_花』の中でいっとう好きな歌詞がある。
“誰も触れない宇宙 深く染められるのは 君だけ 君だけ 君だけ”
私はこの、自分を上手く表せないことがあったとしても、その中に眠っているものを、上手く表せない時期を、優しく肯定してくれるようなこの歌詞が大好きだ。そして、あなたを表せる才能があるのはあなたしかいないということ。
そんなわけで、あの夏があったから私は『HANA_花』の花を自己表現という解釈をして、そのことがお守りとなっている。カムバ期間に渋谷を経由して下北沢に向かう電車にのった弾むような気持ちと曲が癒着して、忘れられない季節の痕の一つになった。
2 LOUD
2024年6月26日発売のINI 6th single『THE FRAME』のタイトル曲『LOUD』。ラップとボーカルが一部の隙も無く展開され、メンバーの声の特質と技術を生かした攻撃の弓がずっと振り続くような激しい曲調だ。曲のテーマに「僕らを囲うTHE FRAMEを壊す」を掲げ、「世の中の偏見だったり固定概念を、自分たちの手でぶち壊していく」というコンセプトの解説があった。
さて、6月である。この曲には“掲げた声と 揺るがないpride”、”戦うために向かえ偏見に“、”はぐれ者の暴走“といった歌詞が見られる。プライドマンス――LGBTQ+やマイノリティたちの権利や文化、コミュニティへの支持を示す政治・抗議活動などを含んださまざまなイベントが行われるひと月——と、無関係ではないのかなと思ったりする。嬉しい。
もうひとつ嬉しいのはMVだった。全体のストーリー性や映像もいいのだけど、ここで取り上げたいのは佐野雄大と尾崎匠海のシーンだ。二人ははじめ鎖で繋がれ、部屋の中央にある一つの鍵と思われるオブジェを争い取り合い、どちらかしか助からないように仕向けられているように見える。でも、二人はオブジェではなくお互いに手を伸ばす。そこで鎖は解け、称えるように抱き合う二人がいる。
こういう構造がこの世にあると思う。私たちは排除し合い争い合うように仕向けられていて、でも仕向けている誰かが、構造があるということ。言うぞ! 勉強をもうちょっとしないといけないのだけれど、それは私がうつ病をこじらせて昨年末入院した要因の一つであるトランスヘイトの加速とかもそうだと思う。スケープゴートを作り出して、人々の不安や辛さの根源を探る矛先を誘導する動き。まだうまく説明できないけれど、書く。
だけど、苦しむ誰かを見て構造そのものを疑い、手を差し伸べ合う連帯が思惑を砕くという姿をMVで描いてくれたことが嬉しかった。それが選択肢として加わるって大きいことだ。
そんなわけで、これをアイドルが歌ってくれたのは私にとって大きいことで、また大きなお守りをもらってしまった。
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けっこう、いわゆる思想の話をしてしまったけど、それも大事なことだと思うので、書いた!
3 最近聞いた曲の話
ましゅまろで二丁目の魁カミングアウトさんをおすすめされて、案の定ぶっ刺さり泣きながら曲を聴き、歌詞を追うなどしている。その節はありがとうございました。心して拝聴させていただきます。
あの頃、僕ら若すぎた青春 [music video] / 二丁目の魁カミングアウト (youtube.com)
凄すぎる歌詞、“いつか消えるからじゃなくて ただ一つだけ 大事だからボロボロの手でも離さない”の破壊力よ。
もともと、私はアイドルが否定文を歌うのに弱い。ルセラフィムの『Antifragile』とかINIの『INItialaize』の“誰にも壊せやしない”とか。否定文って肯定文より、元の言葉の意味を強めるはたらきがあると思っていて、「強い、安定した状態である」より「壊せやしない」の方が強そうってなる。それを、何かを肯定してくれるアイドルが肯定文じゃなくて否定文で意味を強めた楽曲や歌詞を背負うのが、キラキラの二乗って感じにバチバチしててさらにその言葉の意味を強くするのが好きなんだと思う。だから、“いつか消えるからじゃなくて”が、“消える”がさらに強調され、まずパンチがすごい。
そして文章全体も凄い。いつか消えるから大事にするって、消えなければ大事にしないのと同義だ。失うという前提に立たなければ大事にできないなら、失わなければ私たちは大切なものに気づけないと言うことで、そうなる前に気づくことはできるんじゃないかということ。伏線回収とかじゃなくて、人生は一方通行でしかない。大事だと心から思った今という瞬間瞬間を繋いだ先に護られてきたものがあるという順番が、あるんじゃないかという歌詞でとても好きだ。
最後のどんでんがえしも凄すぎるので、みんなも聞いて欲しい(?)