朝五時の食品サンプル

魔女になりたい!/朝丘せろり

小雨の金輪/20240224_INI_READY TO POP in KYOCERA DOME OSAKA

 小雨のような加護のなかで、これを書いているよ。

 

■京セラ1日目前日譚

 鬱をこじらせて三カ月弱入院していて、「これしか希望がないだろうから」と気の毒に思ってくれていた幼馴染がドーム1日目のチケットを当てて遠征の旅程を組むのとかもすごくやってくれて、前乗りして大阪をはちゃめちゃに楽しんでいた、ガチのお気遣いをありがとね。牡蠣と豚入りの檸檬と出汁醤油で食べるネギ焼き、おいしくいただきました。中崎町は小路に雰囲気があってケーキも可愛いところがいっぱいあって、おいしくいただきました。ちよちゃんおすすめでなにプリが皆で食べていたわなか、外さくさく中ふわふわのすっと消えるタイプのたこ焼きでおいしくいただきました。24日中に帰るからお土産にはさすがにできないから……と前日夜に買ってINIフォルダバレンタイン回を見てはちみつ紅茶飲みながら半分こして食べたりくろーおじさん、おいしくいただきました。ずっと食べてるな……

 事前にかなり念入りに行きたいところをマッピングして誘導してくれた幼馴染が、三角州の中州に建物が立っているポイントに差し掛かったときテンションが上がっていて、地理が好きだということを幼馴染なのにアラサーになって初めて知るというちょっとMATCH UP!イベントがあってコンセプトに沿った旅に……!になった。

 あとあのエッセイ漫画で見たことのあった船場センタービルを通る機会があって「エレベーターのボタン、高さのあるプラスチックの丸いボタンをこしゅっと押し込む式で古風!」になるなどした。

 ライブ前はうどんとケーキを食べて、いざ出陣!

 

■京セラ1日目

 

 RADEY TO POPの文字の中にみんなが映る爆上げ演出からロックバージョンのSPECTRAとRocketeerが始まる。みんな気合十分で、でもツアーの集大成という感じで円熟した出で立ちと掛け声に積み重ねを感じた。これから始まるな~と思っていたら、アルバム新曲MOREが早速ここで入って失われる平静。

 MORE、サビの弓を引くようなボルテージを溜めるようなコレオが歌詞を表現していて大好きだった。そして何より二番の歌詞がすごすぎるパート“ほら前進あるのみbut Stop 君を待つこっち”、雄大のウィスパーボイスでパート割りは知っていたけど、コレオがなにプリで悲鳴出た。ツアーのモニターでは雄大の背中に耳をあてた尾崎くんが一緒に映し出されていて、この歌詞の質感がなにプリの循環する愛にぴったりで、もともとこの曲の口上名乗るとことからはじまるのといい歌詞と言い好きだったのだけど、もっと好きになってしまってどうしよう、でももうここでやってしまったら終わってしまうんだ……!になって爆発するような嬉しさと悲しみが同時に存在していた。

 推し定点で申し訳ないのだが、推しであるところの尾崎匠海さんにおかれましては、“誰より光ってみせるから”が「誰より光って見せるから(※おれの責務であり義務)」みたいな裏で燃える焔みたいなものが見えて、それがきみをそう光らせるんだね……になっていた。挨拶の時もだけど、今回尾崎匠海さんの夢のステージでの公演ということで、何となくカメラとかも感極まって泣こうものなら現場を押さえようという雰囲気があったように感じたけど、尾崎匠海さんのそうはさせまいという「(ドームという場所の重さを確かめはするけどそれはそれ、)皆んなの方を絶対に楽しませるぞ🔥🔥」感が挨拶からその闘志が出ていて、公演全体で構築した曲の物語を載せて伝えきるというステージの上の人としての矜持とそれを載せることを可能にする落ち着きをすごく感じた。

 それはなにも尾崎くんだけではなくて、全員にも似たような落ち着きを感じたと思う。Password(挑戦的な表情で魅せる大夢くんがめちゃくちゃよかった)、Shooting Star(池﨑理人氏の最近さらに円熟して渋い声の煽りからしばらく経って状況を理解したとき悲鳴あげた)と激しい曲が続くけれど、みんな全く浮ついた感じは無くて、ステージの上で魅せる人であることに徹する、みたいな芯を感じた。それは口々にアイエヌアイのみんなが言っていたけれど、自分達には早いかもしれないと思ったドームを埋めつくすお客さんの歓声や悲鳴、存在や気配、差し出されたものぜんぶぜんぶを、漏らすことなくひとつひとつ受け取ろうとして受け取ってくれて、食べて、その受け取ったものの重みが確かなものであるからとその地平を踏む力に変えていくような、そうして立った場所から彼らが表現者としての自分をぐっと前に立たせて、作り上げたパフォーマンスを客席に見せようとしている、というような、この二年半で培ったやさしい貫録みたいなものがとても見えて、こんな風になったんだな、とその乗り越えてきたもののことを思った。

 

 第二ブロックのやさしげかわいらし歌唱パートが始まる。YOU INはコレオと衣装も相まってドラマみたいな恋の物語を演じてくれてありがとうになる。Ferris Wheelもサビで踊る尾崎くんが映ったのだけれど、コレオが優しかわいくて似合ってた。We Areのシティポップバージョンがまた見れたことがうれしい(音源下さい)。西くんの優し気な表情がこのブロックは印象に残る。つなぎの途中でエピソードを話し出した柾哉さんが、はけた組が戻ってきたら「また今度話すわ」って行っちゃったのが、ほんとはそんなことないのに、一緒に遊んだ帰るときの友達みたいな距離感で嬉しかった。歌唱パートではMirrorが響いて、推しであるところの尾崎くんが、胸の中にある窓にぽんとひだまりを届けてくれたような感触をくれたことが、ドームで決して近い席ではないここまで届けてくれたことが嬉しかった。あとは木村柾哉さんの歌! 最近、柾哉さんが歌声を出した先で木村柾哉という人格がホログラムのように再構築されて気持ちを話しているような、より繊細でニュアンスが表れていて心が伝わる歌になっていて、表現の変化を感じてわくわくです!

 入院中、病院内の散歩で夕陽を見ながら聞いていたHANA_花はやさしくてきれいで、初めてツアーでイントロを聴いた時に「あれ私って、10 THINGSくんのこと本当に好きになってたんだ……!」とほぼ恋に気づく瞬間になっていたところのみんな大好き10 THINGSくんはサビのコレオが意外と激しい系でもあるというところに気づいたりした。大好きだこの二曲……。

 

 ツアーで聴いたLEGIT最高にぶちあがったな~とか(藤牧さん最高だし、ちよちゃんが公演を通してですがずっと、いい……)、メドレー始まる前にたじくんが「こっから激しいからね」みたいに言ったのがまた友達みたいな距離感でうけたのとか、でも観客にさえ息もつかせぬメドレーが始まったりとか(CALL119の田島さん、松田さんやばかった)してましたけど、会場中ぜんぜん遠いとか感じなくて、みんなが小さいとかも感じなくて、後から考えたらそれってステージを掌握してるってことじゃん、に気づいた。

 そしてさ~~Dirty Shoes SwagとDo What You Likeだよね! みんなが舞台裏にいるみたいなカメラに黒×赤のちょいワル衣装に身を包んでいると思ったら、メンカラの三輪車をぶいぶいいわせながら登場でさ~~なんだよこっちは「ありのままの自分を好きになる」と言われて、わたしのありのままなんて皆と違ってなんにもないから見つめたって虚空を見つめるようなもので、虚ろで気がおかしくなりそうでなにも愛せる要素なんてないんだよって拗ねてたら、ちょいワル衣装に三輪車走らせてでかっさらってくれるからさ~~じゃあなんか、そんな面白いことが起こる人生って、いっか! って意味わかんない角度から投げ込んで心を奪ってくれる瞬間をくれるみんながもっと好きになってしまったよ。

 Let‘s EscapeとINItailaizeのコレオ本当に大好きでもっと見せてください。INItailaize本当にINIというアニメのED曲すぎて、きっとロボを操縦して各学校が争う団体戦の競技のアニメなんだろうな~という謎の目線で見てしまう。推しであるところの尾崎匠海さんは担当パートにINIポーズコレオがあり、背負っているぞという強さを出す踊り方をしていた。フェンファンの作画とダンスが、アニメーターが魂込めてる線のそれだった。

 

 そこからNew Day、FANFARE、アンコールでAMEZE MEとHEROの流れは本当に楽しくて、ツアーが終わる寂しさと今後何を目印として生きればいいのかという喪失感でいっぱいだった開演前の気持ちが全く無くなって、目の前の今の方を絶対感じたいってその気持ちが背中にまったく届かなく振り向かなくさせてくれて吹っ飛ばしてくれて、「RTP終わっても、私は生きていける」と本気で思えた。のに、ボーカル陣がこのブロックずっと凄くてサムライズフェスのときを彷彿とさせるような魂全開放モードに入っていてドーム中あちこち射抜くように歌声をとどろかせていてライブ楽しいってなっていたのに、TELEVISIONがさ、大好きなんだよこの歌、大好きだからたくさんTELEVISIONと歌ったのに、尾崎くんがこのフレーズを持ち帰って生息する生き物だと私たちのことを絶対に知っていてくれたから、いま現れてあげられるこの瞬間にたくさん“大丈夫 笑ってよ ここにいるよ”と歌ってくれたのに、最後“TELEVISION”と歌って終わった瞬間、テレビに終わらないでと叫ぶ子どものような、この京セラドームという箱のなかに楽しかった今日もINIのみんなも閉じ込めきったような気持ちになってしまって、自分には何も抱えるものがなくなってしまったかのように本当に淋しくなってしまった。

 もう二度とこないだろうか、こんな日は?

 

■バスの中で

 

 引き裂かれるような淋しさを感じても、時間は迫っている。公演が終わってから怒涛で夜行バスの出発する駅に向かって、お土産の551とたこ焼きを調達してぎりぎりで乗り込んだ。暗くなった車内の中で眠くなるまで終演後に投下されたレポを見て、そろそろ、と眠りについた。

 りーくんが挨拶で自分達にも日々過ごす中で辛いと思うように、みんなにも辛いことがあるんだなと思う、と言っていたように、INIのみんなも、私たちも、お互いにそれぞれ辛いことが起こったときにリアルタイムでは現れてあげられないことをもう知っていたんだと思った。それがお互いに同じ気持ちだと言うのは、私は想像しなかったと思う。それでも、約束した日に私たちは会う。そんな日があったことを想像してくれることが、私たちは現れてあげられないのに私たちの応援をいつも漏らさず見てくれることが、私はやさしいと思った。

 夜行バスで、私は一度十二時に起きた。そのとき、私は小雨のように私を包む「楽しかったな」という感触に護られていた。街灯の灯をもやわらかく反射させ輝く、小雨の加護のゴールデンリングは、アイエヌアイさんがいつもくれる、もしくはINIというグループそのものみたいで、それで私は今日までとりあえずは生息していて、次に会えるのを楽しみにしている。