朝五時の食品サンプル

魔女になりたい!/朝丘せろり

INI 〜Awakening期 ふりかえり〜

1.

これは個人的な話で、Awakeningを聴くと、寒くてでも水分を含んでいるから肌がひりつかない、氷の中に瑞々しさが保存されたような雪のある空気が呼び起こされる。
「凍った湖、見たくないですか?」と後輩からメッセージが入って、水のある景色が好きな私は大いに賛同したので12月上旬に秋田の湖を見に行く旅行に行った。後から知ったがそこは日本最深の湖だから完全に凍ることはまずなかったらしい。そんなことはつゆ知らず、当時一応「湖 落ちたら」で検索して、本当に底までが深いのでほぼ助からないみたいな検索結果が出るのを確認した。なにか起こったら泊まる湖近くのロッジに向かって叫んでロープとか持ってきてもらうしかないか……という結論になり、ブラウザを閉じるなどの旅行前の準備があった。
結果としてはとてもいい旅行だった。シーズンでもない土日だったので人は少なく、新幹線の駅に降り立って天気はうっすらとした晴れ、稲庭うどんのお店が開くまでの間にロータリーの向こう側にあるお土産屋さんに入った。店内にも人は1人2人いるかないかくらいで日本酒や地元野菜、いぶりがっこを見ている時に、有線かな? 発売前のSPECTRAがちょうど流れてきて、空間の空白や余白にあの祭囃子の打楽器みたいな三味線みたいなイントロが真空パックに入ったハタハタ寿司たちの上にぽろぽろ零れて、自分が住んでいる場所とは遠いここでも流れてるんだ……!というかプロモーションで流してもらえるのってやっぱり嬉しいな、となったのを覚えている。
帰る日の次の日が全曲デジタルリリースだったから、帰りの新幹線でTLのINIフォルダ・オークション回の感想が流れているの見ながら、わくわく力を温存しながら備えていた。というか、何なら泊まった日の夕方チェックインしてから滑り込みでM期楽曲ふりかえりブを書いていたのをいま思い出した(後輩も書き物をするから理解があり、ロッジのレストランのハッピアワーに私行ってくるんで頑張ってください! って言ってくれた)。

私は音楽に詳しくないから批評的な観点の分析はできないし、個人の思い出と曲の感想を結びつけて書くことに果たして意味はあるのかな? と毎回なる(根幹じゃないすか……)。
答えがまだ分からないまま、でも人間がやりたいと思ったらそれにはなにかあるんじゃないかな? と後付けの辻褄合わせのようなことも思って、結論が出なかったのをいいことに今回も書いている。
言いたいことは「Awakeningもありがとう! INIの曲今回もいい!」ただひとつなのだけれど!


2.SPECTRA

・民族打楽器弦楽器っぽいイントロずるいな〜! Aメロは未開の荒々しいジャングルっぽい→Bメロはフェンちゃん迅ちゃんの声からしヒーリング系サウンドだな〜砂浜っぽい→サビ前キュイーンで「あっ? 文明がある!」→また裏で民族打楽器弦楽器鳴ってるジャングルだ! になった。コントラスト!

https://youtu.be/aMOa320erOQ

・ボカロの『阿吽のビーツ』(https://youtu.be/SiqjnFhLq2U)が好きなのですが、イントロが同ジャンルだ……と局所的な盛り上がりポイントがあった。

・MVが今回かなりストレートで、氷と炎、青とオレンジの対比構造がストーリーの組み方としては王道手法だけど王道が王道である故の良さあるな〜となった。髙牧の氷感、フェンたくの炎感。見やすい。

・二組に分かれてダンスバトルするやつ、当たり前に好きだよ!!!!!

・いかち〜曲に雄大のましゅまろウィスパーボイスが存在すること、ありがたい。

・りーくん、デカいボスを倒したと喜んでいたら取り込まれた敵兵が異常な力を持ってしまってラスボスになる感じの機械の管の集合体を操っていて(?)良かった。お顔の力で殴ってくるのあまりにも正しい戦略……

【推し定点】
鮮やかな青髪で監視カメラが複数台吊り下がったラウンドバーに座って高みから見下ろしてくる推し、友好的に声をかけてくるけど中の思考回路が全く人類とは違う法則で成り立っているタイプの人外みがあって良かった……(妄言もいいところだよ)。
よく尾崎くんの歌声はあたたかみがあると称されているのを見て、私は冷たい感じの声と言われる声はイメージができるけど、あたたかい声ってパッと出てこなくてイメージを繋げるのに苦慮していたのだけど、でもSPECTRAをMVと併せて聴いた時に「なるほど? エンジンをふかす時の音に似た歌声だな?」とちょっとガソリンとか炎のイメージがついて発見だった! SPECTRAの使われどころを見るとそういう感じの効果があるな〜となった。


3.Dramatic

https://youtu.be/o_6R5ORdfYE

・この曲パワー系に見えてかなりイメージを司ってる西くんが繊細な細い硬質さを持ってたりラスサビたけちーの正統派ストイックスマート貴公子みだったりで緻密に組まれている、でもそこに得体の知れない柾哉さんの"逆境は むしろ俺の好物だな"に象徴されるリボンのような太さや肉厚さがあったり、たじくんの舌に打ち付ける感じは軽やかで胡椒が効いてるけど密度の濃いメレンゲの比率が重めのムースみたいな感じがあったりで、アイエヌアイ色んな味しておもれ〜〜! に……(昨日パフェを食べて影響を受けているね?)

・フェンファン→京介さん、尾崎くん→フェンファン、京介さん→フェンファン、みたいな違う組み合わせででもそれぞれウィスパー→ハスキー→ウィスパーと要素が重ね合わさる部分があるから二人を配置しながら歌声でグラデーションつけてくるところ声の贅沢使いで大好き。アイエヌアイの声の個性が好きなので……

・京介さんダンスが正鵠無比系で柾哉さんの流派を濃く感じる! 多分止めがすごくて、ヒットが気持ちいい感じだ! 

・大夢くんも印象的なんだけど、こちらは美学とスター性、華を感じる。

・フェンファンまじでBTCのDramaticは更にかっこよくなってて軌道の取り方が本当に美しくて凄かった。

・てかまじでAwakenig期の西さんのラップの進化ありがたい、また楽曲に厚みが出て………


4.BAD BOYZ

・BAD BOYZ大好きです!!!!!感謝しかない!!!!!! BAD BOYZに感謝する勢力!!!!!!

https://youtu.be/8tNka5jvyU8

・自分の中にINI楽曲ランキングつけたら1位候補はAMAZE MEとBAD BOYZになる。

・もうさMVがモノクロからサビで朱のラインとリップ、セルリアンブルーの面が基調となった色彩配置になるのコントラスト最高ですよね〜〜!! 狙い通りやられた〜〜ってなる!

・その中で赤パンツをあてがわれる男、髙塚大夢くん金髪も相まって鋭い表情が悦っててめちゃくちゃ良くて、流石効果抜群、あんたはスターだよ……に

・"now next chapter"の後藤さんBTCで抜かれたときめちゃくちゃ良かったことを広めていきたい委員会の者です。

・百万回言われてるだろうけどフェンファンの"周りのノイズはもういい"が張り詰めた硬質な地声での歌われ方にもうみんな虜だよね、音源聴いて夜中にベッドの中で虚空に向かってガッツポーズしたよね。そして実際に武道館で被せ突き破って響いたときぶち上がったもんね。

・りーくんめちゃくちゃいい子で傾聴者タイプでもあるのにビターで危険な美しさのあるビジュアルとこの低音を神から与えられたばかりにこちらは気持ちよくボコられる感じバドボという楽曲のイメージの体現者ででもこの子本当はいい子ででも……のループ

・2番サビ京介さんの"That's we came for"の引き金引くところクリアで正鵠無比ですごい。

・ラスサビまでのブリッジ、尾崎くんの聴いたことのないタイプの高音に殴られる→"我儘に本能"という歌詞だが雄大の声が可愛すぎてこの我儘ってマイメロディとかの世界観だよね!になる瞬間で中毒性に油断→パワフルな京介さんのシャウトにねじ伏せられる、の一連これがアイエヌアイの楽しいところ……

【推し定点】

・え"最初から最高に レベチなour story"といい"俺について reboot rewrite yeah"といい今回の尾崎くんの高音パートめちゃくちゃ桂馬って感じで(桂馬?)使われ方良〜〜! になった。"レベチな"のエッジボイスは技巧……となり、後者は振り絞ってひらりと出してる感じがサーカスの空中ブランコを見ているようなスリリングな感じが、いい……! となる。

・"We're the bad boy."の拳をボキボキやるところ、イメージ図としてのボキりじゃなく尾崎くんは完全にリアリティラインがかなり現実に寄った鬱邦画質感の陰湿で嫌なボキり方をしていてこの人演劇の人でおもれ〜〜ってなる。

・ラスサビの両腕ベンチプレスあげるやつみたいにあげる振り(比喩のトーン間違えてるだろ)なんかめっちゃチャラくていい、尾崎くんたまにチャラい動きするからそういうのもあるんだ〜っていつも見てる。


5.Do What You Like

・明日友達と遊ぶもしくは昨日遊んだから今日は買い物してご飯作ったり一人で散歩して陽の光浴びてケーキ買って帰ってきたり気ままに昼寝したりしよ〜って時に聴きたい歌!

・曲調からしてrelaxムードのゆるっとしたコレオになるのかな〜って思ってたらキリパ系統の繊細オルゴール緻密系統のコレオだったのでyeah,This is INI……になった。BTC本当に幸せ空間だった。


6.Runaway

聴く前は題名からして検索してみると逃亡者とか出てくるから怖くてダークな曲かな? と思ってたら、こんなにも優しい曲調で"君と二人"、"Let’s Runaway"、"夢の中へ"って歌ってくれる歌で、こんな世界観があるんじゃないかと広がりをもって教えてくれたの本当に、そんな世界があると思ってなかったくらいだから、りーくんがBTCで言ってた自分を大切にして欲しいというメッセージを曲としてくれたから私たち忘れないでいられるよと思う。BTCの東京公演で退出曲として流れていて、外に出た後に見た橙とサーモンピンクの夕焼けと一緒に記憶に刻まれている。

たじくんが書いた"いつものように悩む 寝れない夜が心蝕む 叫びたいけれどどこに行っても結局 叫べなかった"を聴くとき、叫べないのか……となり、あなたたちをそうさせてしまうものの正体って何だろう、抑圧の正体は……と考えてしまう。見られる職業のこと。
でも(これは後にひっそり書くかもしれない話なのだけど/何故なら私はそういうインターネッツの漂流物を灯台の明かりとしてきたから/これまどろっこしいな、クィアの話です)、ちょうどBTC前後に正にそのままそういう状況が私にも訪れて、その期間辛かったから逃げ場ソングとして、ここでだけ私は解放が許されるからRunawayを聴いていた。そしてそれが終わった時にNew Dayを契機ソングとして聴いて強く生きた。ただの、ある個人の話〜。

この曲を届けてくれてありがとうなんだよ〜!


7.

曲の背景を押さえてストーリーを理解しようとすることと、個人の文脈に現れた曲が特別な意味を持って聴こえてしまうことって、どれくらいのバランスをとったら許されることなんだろうと最近は思う。し、音楽を真面目に聴き始めたのが本当にINIさんに出会ってからなので、その答えのヒントになりそうな理論体系にアクセスするための知識資本がない感じだ。どう検索したら出るんだ?
でも、BTCのディスクを見始めたときに訪れたことがあった。私はクリスマス東京公演と武道館最終日夜の2公演に入ったのだけれど、BTCの円盤に収録されているのは25日クリスマス公演で、映像化されたそれを目にした瞬間、閉じていたスナップボタン式のカーディガンの前を引っ張って全部一気に開けたときのように、"映像として残った公演"と"映像化されなかった公演"が硬く弾ける音を立てて不可逆に分岐し、金ボタンで輝かしく何度も見返すことができる動かざる記憶としての映像化された公演は残り、記憶の中だけの公演があったことを、もう忘れてしまったことの方が多いという事実を突きつけられて、音もなく沈んだそれの立てた余波で知るしかなくなってしまった。
大切だったことも時が経てば人は忘れてしまうし、忘れてしまったから大切じゃないわけじゃない。でも、間一髪、本当に間一髪だけど、BTCのことをブログに残していた! 勿論、もうここでも言葉にできたこととできなかったことで分岐は出てしまう。だけど、あなたたちがくれたものがどれほど分かちがたく個人の人生と結びついているのかを、影響を与えてくれたのかを、いつかありがとうと言える準備が整うまで記録しておく、そういうポジティブな地縛霊を作るみたいな(?)お地蔵さんを作っておくみたいな、う〜んもっといい比喩がある気がすごくするけど、そういうものとしてブに残しておくことは少なくとも私にとっては意味があるかなと思った。あとファンレター書く時に伝えたいことの種として実用的に役に立つことが分かった!

DROP thatも楽しみだ〜!