朝五時の食品サンプル

魔女になりたい!/朝丘せろり

INI M期ふりかえり!

SPECTRAのMVを聴いてMVを見たら、あ〜私ってコントラスト厨でもあるんだなと思うと同時に、M期の曲の輪郭がよりハッキリ立ち顕れる感じがあったので書くことにした!

 

1.
2.Password
3.STRIDE
4.Shooting Star
5.Mirror

 

********

 

1.

6月だったような気もしているけれど、夏の初め、晴れた駅のホームで、突如公開されたM期のジャケ写を見て一緒にいたKさん(ソウルメイト)に多分いつも通りの大声で興奮を伝えたのは覚えている(Kさんは私がINIを推していることは知っているくらい。たまに動画を見せると見てくれるし話を聞いてくれる)。カムバ! 楽しみにしていた旅行の始まりに、さらに楽しみなことが重なってぴっかぴかのスタートだった。INI 3rd single『M』のジャケ写は、ヌーディなサンドベージュと黒でまとめられたシックな衣装を着た皆がチェスの駒(コンセプト的にはクロスワードパズルのコマかな?)のように同じ方向を向いて並んでいる構図で、引き算的な構成が洗練されている感じがあってわたしはとても好きだった。発売日は8月下旬。夏に出るシングルだし最早いまは初夏だけど、その衣装の色合いからもう夏も終わりに入った残暑の頃を感じさせるな〜と思った。文章題解く時に先に問題を押さえておいて、この問いなんかアツそうだな、読むの楽しみ! みたいなラッキーで軽やかな先取りだった。この異常気象な最近だと残暑は現実的には厳しい暑さが予想されてギラギラのドロドロだろうし、灰色のコンクリートに囲まれた地にある職場に赴き冷房のかかったオフィスで日が昇ってから沈んでも働くので、どうせ季節なんて感じられないだろうから、そこでこのジャケ写のCDが並んで、アイドルたちがカラッとした熱い風が吹くけどふとした時にシロップみたいにひやっとした風も入り交じる砂丘が何となく目に浮かぶような衣装を着て活動してくれるなら、わたしの残暑は"それ"が真実になり、音楽でアイドルと一緒に活動期間を駆け抜けられたなら二度とない季節にやり残したことはないと惜しむことなく思えるのを私は知ったので、それが2022年の晩夏の記憶となることは素敵だ。適応のために過度に一定になり乾燥したわたしの感性に、アイドルが雨を降らせ豊かに植物を茂らせていくように季節を巡らせてくれるのはとても嬉しいと新曲が出る度にいつも思う。ありがとう、支えられているよ。
そんなところから、わたしのM期ははじまったんだよ!(報告!)

 

 

2.password

 

SPECTRAのMVを見て「PasswordのMVってやっぱ映画的な撮られ方をしてたんだな〜」と思った!

https://youtu.be/ZU58-PZnXOM

もう散々言っているのだけれど、秒針の音を背に将吾さんが囁いて別の人物がフラッシュバックのように映るカットとか、西くんが格子の向こうからガンガンノックして"Open myself."って言うところってか曲に命令文が多いことそのものにノーラン!ノーランだ! と思ったし(※違う)(でも色調もかなりメメントとかっぽくない?)、最後とかファイトクラブじゃん!てかもう西くんのタイラー性がすごい!2番Aメロ(2バースって言うのかな?)で西くんと尾崎くんが並ぶとタイラーと"僕"っぽさすご!となった(※違います、西洸人さんはご両親からの愛を全身で受け止め、今度はその愛を取りこぼすことなく人に一身に注ぐことのできる熱い誰かのケアもできる男なので……)(でもさ〜憧れられる対象というところもタイラーみが……)。だから映画みたいだ〜という印象に……

音源!音源初めてフルで聴いたとき、Cメロからあの池﨑の理人のラップブレイク入るの?え、大サビがラストに向かって後ろの音数もこれ以上ないほど足されていきブーストかけられるだけかけられてる、ヒャッハー!扉ぶち破られてどこまで行くんだろう!みたいに夜中に拳突き上げた。最高。こう、自分は割とはっきりサビがある曲が分かりやすくて好きなタイプなのもあるけれど、なんか、すごい、構成愛好家なので(?)あまり自分が見たことない構成のものを見るとめちゃくちゃ楽しいし、使ってみたいという行き場の無い衝動が……三幕構成とかはまだまだ全然だけど、ブログとか長い文章を書くときいいな〜と思ったブログの構造をExcelに書き出してみるとか、そもそもブログ読む絶対数が少ないから(読みなさい)『論文の教室』取り出してレポートのアウトライン形式で無理くり埋めていく意味不明な遠回りというかそれは逃げ……をすることとかが趣味なので、なんかこの、Passwordの構成に感銘を受けました! ってなんかやってみたい。もう最悪トルコランプ作り教室でタイルの並べ方をPasswordリスペクトでやってみました!とかでもいい。え、楽しそう、蛍光ピンクとグリーンは絶対入れてさ…


好きなところは、あの2番Bメロでフェンファンが中心になった時の風車みたいに端から回っていくコレオがやっぱりね!(みんな好きだよ)そして左右反転ダンスを現場来てやることを知らされ、それでいてできる木村柾哉さん本当にやべー人だ……

 

 

3.STRIDE

 

はい、RUNWAY→Brighter→We Are(+AMAZE ME)のオタクはSTRIDEが好き。分かりやす!

https://youtu.be/FuSxtctk4p0

"Cause you are by myside."のメロディーラインがめちゃくちゃ好きなんだよ〜。
PV、外は大雨だったらしいけど霧がかってふわーんと窓の向こうが白んで明るい中でトロピカルなサウンドがドゥグンドゥグンと打ち寄せる波みたく鳴って笑顔で羽ばたくようなジャンプするイルカのようなダンスを皆が踊る光景、雲の上とか夢の中にしか存在しない夏の海辺という感じが好き。
振り付けがさ〜ずるいよね!"行ける I believe"のニャンニャンポーズがくるやつ! 1番はめちゃくちゃ可愛くさのたくが猫猫ポーズやった後にスタイルお化けお兄さんのたじが呼ぶ振り付けやって大人っぽ…ってなるギャップが楽しくて、2番の髙牧は2人並ぶと可愛いけど振りは意外とクール目な猫猫で踊るのねみたいなギャップ、個性……京ちゃんはワイルドで大きくて、大夢くんはスタイリッシュ&エッジ……
"Everyday Everynight"のフェンファンの気品×フェミニンのウェーブ、目を閉じて I can see"のたじの指をクルクルと回して落とすところの夢見心地さ、雄大のギャルい裏ピースのピンクグレープフルーツジュースみたいな元気の出る輝きがお気に入り。柾哉さんと尾崎くんは流石こういう曲似合うよなー、パッと明るさが画面全体に光量として加わり爽やかさがくっきりとする…あと理人はKPOPのダンス大好きなんだろうなーっていうのが笑顔とかからすごい伝わってくる気がしたんだよな…

 

 

4.Shooting Star

 

尖り尖り問題児(?)Shooting Starくん。個人的な経緯ではあるがわたしはMのデジタルリリースの日に流行りの感染症にかかり始めていたらしく、それに気づかないまま解禁された音源を0時から聴いていて、STRIDEで頭の凝り固まったところを気持ち良くほぐされて海月のように脳みそをたゆたわせていたところに突然Shooting Starくんをぶち込まれ奴は最後まで己の道をぶっちぎっていったので風邪の時に見る夢……? ってなった思い出がある。普通に風邪(感染症)だった、ごめん。M期、それは曲と曲の落差が凄いsingleなので順番に聞くとジェットコースターに放り込まれているんだ……

https://youtu.be/Rx6t4opYFKs

そんな尖った曲の頭は西→池﨑のラインを使う磐石の布陣。ド低音西さんがボルテージ低めから始まり1度小爆発、池﨑の理人が短い掛け声で装填装填装填!着火着火着火! そして中音域ラップの地位を確立してきたちよちゃん(後藤威尊さん…)が最高潮に持っていく!彼はまず声がいいし、音の粒を揃えたり語尾の処理が自然でキレがよかったりと、出したいイメージに対する声のコントロールセンスがあるなあという印象で、ドス鯉のバリエーションにも無かった、整いつつジョーク的な軽妙さもある中音ラップで大好きだよー! そんなラップラインがタラップを駆け上がるように畳み掛けて頂点まで行ったところで歌唱メン一発目・尾崎の匠海がゴリゴリにエイベ節効かせたハスキービブラートでトドメを刺してくるのもう笑っちゃうんだよな。技術……この男技術拳にのせて殴りにきてる……いや〜Shooting Star流れ全体が狩りに来てる布陣!
PVは池﨑氏のあの声を持ってして完成するノルカ〜ソルカ〜のイカダンス(?)での京介さんの体幹に恐れおののくよね。この人未経験者だったのもう嘘だろレベルのセンスと進化を……あとフォロワーさんみんな2バースの将吾さんの"twinkle twinkle ★"で召されていたけれど分かります、頭シェイクされてお星様が回るの見えますこれは召されます。あと迅ちゃん見た目あんなに色気あるマンネなのに声があまりにも爽やかな少年で、全体としてバチボコ曲なのに迅ちゃんと尾崎くんが歌うときに青春もの少年漫画指数上がる感じ、声が本当におもしれ〜グループだよアイエヌアイ……バラけた声質に毎度感謝だよ……!

 

 

5.Mirror

Mirror、メッセージ性大好き人間なので一貫した世界観とストーリー性に志や気骨を感じていいなあと思い(根性があるか無いかで判断する感じの人?)、そしてそのテーマがもろにわたしの脆弱にぶっ刺さるかたちをしていたのでかなり好きな曲ですね! あの……己を救うのは他者でなく自己だった、みてえなのが……"いつの間にかぐんと育った僕の 頭を撫でて"をこの場合誰かに求めるのではなく自分に向かって言うところがあの……鏡ってそういうことですよね、使い方がうめえ……。そしてこの曲の"頭を撫でて"などの歌詞から少し幼い感じ、少年から大人になるような気持ちを想像させる〜みたいな解釈を見たときにアラサーは「え……?全然今でも思うが……?」になり己の成熟してなさに……死……

https://open.spotify.com/track/7KUE8X4UbRB7Iu6x7yXF5F?si=_aWuuqr1Roa_zvzoqAAc0w


マジでこの段落聞かなくていい話なんですけどもうこの際ズレている気もする物凄く偏った話をすると、ぼくはMirrorを聞いた時に己の青春人生少年漫画『D.Gray-man』のスーマン編の古傷が痛み、それが自分に影響を大いに与え脆弱性をもたらしたことを節目節目に感じるんですが(何の話?)、わたしがこう解釈した! とオタク特有の早口で説明すると、スーマン編は作品の序盤でかなり絶望度が高いエピソードの塊でこの話は基本人間を殺戮し世界を支配しようとする"アクマ"という敵と戦う話なんですけど、強すぎる脅威を何とかしようと主人公のアレンが事態に対し単独で立ち向かうしかない状況で仲間と離れて一人で行動し凄い技とかも出して身体にも限界が来てるけれど状況は悪化の一途を辿るばかりで、いやいくら物語で主人公に苦難を与えろと言ってもやりすぎでは? みたいな状態で、ここで周りには誰もいないのにアレンは「誰か…!(助けて)」と口に出してしまう。アレンはいい子であまり人に助けを積極的に求めない性格で、それでも口に出してしまうほど追い詰められていることが伝わるシーンでまあこれは少年漫画だしな!ここで仲間がくる熱い展開になるんだろうな!と思っていたら、アレンのコートから出てくるのは若干導いてくれるけど特に言葉は喋らない鳴き声は発するティムキャンピーという石の(※石の)マスコットキャラクターでおっ、このティムキャンピーが隠されていたすごい力を使ってこの状況を打破するんだな?熱い!って思ったら、ティムはアレンに噛み付いて怒る様子を見せて、それにアレンはびっくりして「分かったよ! 頑張る!」って反射的に口に出して、それを口に出せた自分に気づいてまだ頑張れるかもと思えて心を立て直してまた立ち向かうという展開でつまりどんなに辛い時でも仲間は来ねえし石は噛みついてきて最終的に己で己を救い奮い立たせるしかないっていうことですか厳しすぎない??? でも確かにアイドルのオタク2年生だけど突然人間性を問われる状況に迫られてでもそれは個人の背景とか感じ方に依拠するから結局は全てを説明したり弁解したりすることも出来ず自分で判断するしかなくてそれがこれか! Mirrorってそういう曲なんだな! って思ったけど多分Mirrorは敵味方とかじゃなくて自己肯定自己受容とかの話だから違うな! この話やっぱ無しにしてください!!


そうですね、でもMirrorに関してはCメロのろむフェンで割れそうに硬質で澄んだKPOPっぽい声質のターンからおざまきの掛け合いになりJPOPーー!JPOPの風ーー!って日本語のお手本のような一音一音ハッキリした歌い方で歌詞が自然と入ってくるところやっぱり好きなんですよね、"各自"とかいう「んん???」という歌詞も京介様にかかれば「そんなこともあるか〜♪」ってなるからスっと入ってくる。なんか、曲に支えられるという体験があると聞いていて、確かにそれは自分にも今まであったのだけれど、なんだかMirrorって包帯があてられるような感触で、発売日に所用で地下街をへろへろの状態で目的地に辿り着けず歩いている時にあのCメロがふっと頭に流れてあのJPOP魂の手触りが(?)折れそうな心を支えてくれる感じがあって、これからも同じようにこの曲がふと蘇るんだろうなと思った! まあそれは健康診断の日で朝から何も食べていなくてやっと終わってへろへろの時に食べたいものを見つけられなくて店から店を死んだ目で見て彷徨っていたときの話なんですけど……(スケールが小さすぎる)

 

はい、そんな感じです! M期ありがとうございました!
なんだかさ、新曲が次々と出るから刺激を求めて新しい曲へ新しい曲へと手を伸ばすあまり、私はその曲の重みを感じきることなく浅い消費をして、皆んな擦り減らしてしまうのかなって思ったけど、全然そんなことは無かったよ! 新しい曲を聴いたらまた違った目で過去に出た曲を見られることがあるし、実際に何度も頭に蘇る、思い出す、分かることがある、一層愛しくなる、好きになるんだね。そのことに安心して嬉しかったんだよ。


アルバム、楽しみだな!

INI/I期楽曲 ふりかえり!

1.

2.CALL119

3.We are

4.BOMBARDA

5.DILEMMA

6.AMEZE ME

7.Polaroid


*****

1.


覚えている、4月の18日0時のこと。INIの2nd single『I』がデジタルリリースされた日で、月曜日だから確か普通に在宅でもなくてそのあと会社に出社する日だった。もう徹夜も無理もきかない年になってきた社会人にコンテンツの0時更新はキツいよ〜と言いながら、いざ新曲を複数曲食らったら夢中になってしまって、多分3時くらいまで私にINIを布教した始まりの人間・柾哉さん推しの幼馴染と"ここやばくない?""ヤバい!"等と曲を聴くタイミングを合わせてLINEを送りあった夜があった。


*****


普段、あまり音楽を聴く習慣がないまま生きてきた方で、音楽に詳しい人って大体中学生の時くらいからCDとか集めているイメージがある。弟がその道を爆走して行ったけれど、私は「えっ、音楽ってこういう3分半に全部の世界観が込められてるんでしょ? これは深そうな領域だから潜るのを止めよう!」と明確にその分岐をへし折った記憶がある(なんて勿体ない人生なんだ!)。

あとは、平常心で聴けないのが問題だった。音楽的教養の無い私は完全に歌詞先行で音楽を聴くタイプになっており、自分に合わない言葉選びや歌詞の世界観があるとブチ切れて憎しみでいっぱいになったりとか、逆に歌詞が刺さりすぎて泣きながら歌詞サイトを検索して感銘を受けたセンテンスを指でなぞってみては受け止めきれなくてブラウザを閉じては開き、閉じては開きを繰り返すのでなかなか数を聴くことが出来なかったりした。たくさん音楽を聴く人って、今はこういう気分だからこの音楽を聴きたいなとさっと出てくるのだろうけど、私は大体こういう感じで自分の暴走に疲れるので、音楽を日常的に聴く習慣が致命的に身につかなかった……


*****


そんな人間が思いがけず今アイドルにハマり、INIの楽曲を聴くことになった。

聴いたときの感想はこう↓

えっ? これ翻訳文学っぽいじゃん!!!良!!!!

突然の翻訳文学……

私はハリポタで言葉を覚えたオタクだったので海外翻訳文学の文体にどうしても憧れがあって惹かれてしまう。日本だとあまり使わない軽妙な言い回しに意外性を感じたり表現の幅が広がる感覚があったりするし、洋画とかの台詞回しって憧れますよね….(韓国映画とかは構造に意図がバシッとハマっている重みが好きだったりするね)。うーん、ちょっとイメージがずれているかも、なんと言うのだろう、翻訳歌詞って一見平易に見える言葉にも特有の強度があって好きなんだよな。手に収まるサイズのこころよい重さの文鎮みたいな。海外でも通じる歌詞を組み立てる時に国を超えて意味が伝わるように置かれる言葉たちが、選別されてきた者の風格を纏っていていい意味で均一さを備えている感じがいい。そういう雰囲気をINIの楽曲歌詞で感じている。

つまり、KPOPの潮流にある音楽を追っているともう大体歌詞が自動的に翻訳文学になるので(そうなのか?)、私の楽園は……ここにあったのか……! という気づきに至ってハッピーになった。


*****


音楽を聴く人は、普段どうやって曲を聴いているのですか?

『I』を聴いた時、本当にどの曲も好きで好きでウワーッ、この声色この歌詞この主旋律! とたくさんなって、例えばこれが本や漫画だったら一旦閉じて気持ちを落ち着けてから再開することを繰り返すけれど、でも音楽って流れが計算されていてそれが作品なわけで…と全曲止めずに聴くことにした。

その時の、その1回きりの初めての、もうコンタクトレンズもとって何もかも輪郭が朧げで暗い深夜の部屋の中、新しく聴く音たちが声たちが全瞬間予想がつかなくて、夜を走る列車の梯子のように連続して駆け抜ける、明る車窓みたいな光のかたまりとして頭の中に流れていった心地を忘れない。

もう一度、曲たちを頭から聴きかえして分かったのは、あ、初めて曲を聴くという体験って本当にその1回きりしかなくて、二度とそのときの感覚は戻らないんだということだった。だったら、あんなにあっという間に去ってしまうのなら、止めながらいちいち最高のボルテージに上げていって聴いた方が良かったのか? とも後悔が募って、未だにどっちがいいのか分からないけれど、音楽をシングルやアルバム単位で最初から最後の曲までぶっ通しで真剣に聴いたことがなかったら(酷い)気づかない二択だったから、そういう世界があることを知ることができて良かったと思った。

 

以下、各曲の思い出!


1.CALL119


INIの好きなところのひとつとして、声の幅の広さ、バリエーションの多さがある! 2ndは1stから更にみんなの声の個性が際立って、さらにそれが効果的な組み合わせでバチっと決まっているのが本当に好き。

強めのラップラインで低音をゴリゴリに攻め、ボーカル陣は清涼感に振った歌声で綺麗にメロディーをとると思ったらボーカルラインの声を崩したラップも聴けるんですか? の大満足だった1曲。"Baby 俺がSaving you"ってそんな歌われ方するんすね!

たじくんのアクセントの置き方が韓国語・英語寄りなラップ、理人の低音は言わずもがな指の動かし方とか研究したんだろうなと思わせるカメラでの見せ方がキマッてる、西くんのちょっと鼻にかかってもったりしたラップ、とドス鯉クラブは勿論、私は柾哉さんのブレないお手本のようなダンスをするのにちょっと幼いような声の出し方をするところとか、迅ちゃんの外見は色気たっぷりなのに歌声が少年感を含んでいるところとか、後藤威尊さんのあのスマートさや彼の美学は崩さないままにここに欲しい!と思ったところにアタックしてくるラップが好きですよ。

映像的には、ふぁんたじーのコントラスト(細身で踊りのスタイリッシュな将吾さんと、フェミニンなニュアンスも踊りに入れてくるけど骨格が完成されているフェンファン…)っていいな〜となったり、1番の"Let's go 焚き付けて"で京ちゃんがセンターに出てくるところでJPOP指数が異常に上昇するところ、脳が混乱していい…(私はベイマックスでの桜の描写とか文化が混ざるのが好きなオタク)、そこからブリッジでりひろむの高音→低音→高音でバチバチに高低差を出してくるの、素材を活かしていて最高だな〜となる。

2番冒頭の、尾崎くんの空気多め甘めのハスキーボイス→雄大のウィスパーふわふわボイス、後ろで踊る迅ちゃんとビジュアルでも声でもふらふらと人を惹きこんでおいて、最後ゴリゴリの西くんでぶん殴られる流れ、何もかも分かられている…

3/26日の土曜日に王様のブランチに9時半から生出演して披露するからと、金曜日の夜から泊まった友達の家を朝六時に起きて出て、半分眠っている身体に澄んだ水色の朝日を浴びながら最寄りまで帰ってきてそのまま病院行って帰宅してちょうど始まるところに間に合った思い出があって、その時のぴっかぴかの、なんか爽やかな心地が曲に幾分プラスされてしまっている。

https://youtu.be/RJJAJwJttiY


3.We Are


CALL119とWe Areが出て2曲を聞いたとき、何だか閉塞的な時勢も相まって後者を聴いたら泣きそうになった。人は歳をとる度に底から明るい曲を聴くと逆に泣けてきてしまう生き物なんだな……と知った。We Areに投票した人です(でも活動曲はCALL119で良かったと思っている)。

We Areの振り付けが好きで好きで、私はダンスについて「運動神経がそもそも悪いし、何をどうやったら身体がその通りに動くのか分からねえ…これは無理だな!」と学生時代の体育の授業の時点でこの分野を諦めていたので(アイドルを推すのに持っていたい教養に繋がる道を捨てすぎていないか?)、テクニック的な話が全く分からないけれど、それでもダンスで表現するって素晴らしいなと思った。

特に、1番サビの波のようなカノンと2番サビのあの膝をブクブクブクッ! ってバブルが昇ってくるように動かす振りが、絶対に脚の筋力をえげつなく使うだろうけれど楽曲の爽やかさを倍増させていて、ダンスってこんな風に楽曲の表現を強めるんだな、と印象に残っている。

フレーズでは、"いつかきっと叶えられるさ"が1番好きかもしれない。

ふたつ考えたことがあって、"いつかきっと叶えられるさ"と歌う彼らは、人生を懸けてオーディションに出て何者かになるために期限を区切って自分を追い込んで挑戦してきた人たちで、このWe Areを素直に読んでいったら誰かの夢を応援する歌で、真正面から聴くと何者にもなれずに青春が終わった人間には、若き人たち行く末を応援する心持ちになりながらも、少し眩しすぎる(何視点?)。

でも曲全体として聴くと歌い方も優しげで柔らかくてスっと聴ける。だからなんだろう、発売からしばらく経ってこの前、ふとこの曲がシャッフルしたプレイリストから流れてきた時に思ったのは、何者でもなくたってなれなくたって、確かに"いつかきっと叶えられるさ"というフレーズは、あたしがもし神様だったらこの世の人に絶対に降らせてあげたい祝福の言葉のひとつかもしれないということだった。

こう、何かを目指して叶わないことなんて沢山あるし、そもそも生きること自体がとても難しくてやっとで、でもそんな時にどんな些細な夢とも言えない夢でも夢見ることができたなら、そしてそれに"いつか"という期限が許されたのなら、それはもう叶う叶わないの次元とは別に、そう願えたこと自体が現実の苦痛をただひとつ和らげてくれて、"いつか"という方向を持てることが希望になって頼りない明日を支えてくれるんじゃないかと思った。

私はこの歌でそのおまじないを得ることができて唱えられるようになったから、あって欲しいよな、家族制度とか規範とかそういう網から零れてしまって人生が辛い人がいて、いつかその子の元にもそういうものがあってほしいけどそれってその子がそう思わない限り外からどんなに働きかけてもなかなか上手くいかないから見守るしかなくて、私はそれまで生きるぞ。

西くんが晴れた空の下、ダークサイドの魔法使いみたいな裾の長いジレを着てニッコニコの笑顔で踊るの、いいですよね…

https://youtu.be/_7UIC72D8II


なんか長くなってる! 簡潔に行こうかな!


4.BOMBARDA


BOMBARDA、私の好きな言葉です。痺れるよね。

BOMBARDAの好きなところを言おうとすると全歌詞を引っ張ってきて歌い方を述べる羽目になるので絞ると、もう2番冒頭の"囚われの身なんて What お断りな new type"から"全然いらないdéjà-vu 全てパッと変える the brand new styleに"の一連がハチャメチャに歌詞も声色も凄すぎて訳が分からない、なんなんだこれは。Performance videoでもこの一連の流れが最高に最高を上乗せしていて、松田迅様のこれ映画? みたいな最高なアイソレと表情管理から始まり、良き時代のオープンカーの如く後藤威尊さんがスタイリッシュに赤い衣装で中低音ラップを決め、西洸人が暴れ散らし、田島将吾さんのあの子音が強くてテクスチャ粗いところが最高のラップが来るという……。

この曲のサビの振り、インド映画観てるときみたいなやり切っているからこそのインパクトと同時に面白さが出てるやつで大好きなのだけれど、それを可能にしているのが、踊っているところを見ると何故か"振り付けの意味が全部分かる"とこちらに思わせるパワーがあるダンスブレないマン・木村柾哉の力を感じるよね…

本当に冒頭付近の"またtrick trick 嘘が蔓延った 荒れ狂ったarea"の歌詞でこの世に該当するものがHiGH&LOWかBOMBARDAかの二択になるの勘弁してほしい(もっとやってほしい)。

あと、BOMBARDAでエクササイズを作ってほしい。太腿運動のカロリー消費量が大きいって言うから…

https://youtu.be/uWTItyONqJg


5.DILEMMA


リズムが異質感あって曲者でいい。SHADOW組(後藤威尊・許豊凡・松田迅)が死ぬほど輝いている。全員で作る、囚われる系の振付が曲と合っていて本当に綺麗。歴史画?

扉の振付が二回くらい登場して、ド低音池﨑理人さんがガチっと閉じてからの突き抜け高音ハイトーン髙塚大夢さんに"翼折れたAngel"という詞を歌わせるのは甘美な罪ですよ? ダンスブレイクで雄大・尾崎くんの扉から現れた西くんのものすごく強い敵感が半端なくて笑ってしまう。

藤牧京介さん、お顔があんなに犬かわいくてピュアネスボイスなのにダンスがワイルド寄りなのギャップがいいですよね。

https://youtu.be/vu3kwh9imPQ


6.AMEZE ME


私はIの中でAMAZE MEが1番好き!パフォーマンスで見たい…

歌詞が本当に綺麗。"午後十二時 あの日ざし えくぼのように すっと胸に刻まれ"、どうやって生きてたらそんな比喩が出てくるんだろう?

"気づいてないでしょ"が恋をした人のいじらしさが出てて胸がきゅんとなりますね。あと推しの尾崎匠海さんがCメロの"夜明けまで側にいて"を(多分………?)歌ってくれたので、夜明けの概念が似合う……これが聴けただけで生きる意味がある……になっている。


7.Polaroid


もうさ……IZ*ONEの『Panorama』然り、ガジェットを比喩に使ってくる歌の意味を読み解いてしまったが最後、私はただではいられないことが予想されてまともに歌詞を覚えることが出来ていないんだ……怖い……ほんとすいません……うう、いつか受け止める時がくる……(『Panorama』を知ってから数日間、毎晩歌詞を寝る前に読んでは泣いていたから……)。


https://open.spotify.com/album/3DWxyVxm31t37svmvh3yGA?si=D_mylXmfSAemxzhp75B3dQ


わ〜! 誰に向けて書いているのかも、なんかこんなことを書くつもりだったのかももう分からないですけど、私は『I』が好きだったことを言いたかった!

もう3時間後くらいには3rd『M』のデジタルリリースですね! 楽しみ〜!


INI・尾崎匠海さんが出逢ってくれたので、ロマンティック・アセクシュアルを自認することを自分に許した話

このブログは長年二次元オタクをしていた人間が、彗星のように目の前に現れたINIのキラキラアイドル担当・尾崎匠海さんに沼落ちし、この世の色々な仕組みが分かりロマンティック・アセクシュアルを自認することを自分に許してハッピーライフ☆を送っていくようになった話です。
本当は布教に貢献できるような内容にしたかったのですが、アイドルが人生に食い込みすぎて書き手の気持ちの話になってしまいました。おれに筆力が無いばかりにこんな怪文書を……。
結論、尾崎匠海さんはすごい人なんだ! ということが言いたかったです。1万5千字あるので好きなところだけ読んでください! 最後のおまけはINI各メンバーの印象について思いの丈をぶつけています~。

 

目次

1 出会い、前

2 土日を溶かしてプデュ2を見て、推しの順位を目撃する

3 伝説の『無限大』1組シンメ

4 「見ていたら、分かるよ」と思うこと

5 推しを前にすると語彙が消える

6 出逢ってくれたことが、

7 もう一度『Stand by me, Stand by you』、そしてわたしはわたしを許すことにした

8 おわりに

9 おまけ ~各メンバーの印象~

 

1 出会い、前

 

たぶん、わたしは世間で言うところの“恋愛”の一部がどうしてもできないのだと思います。
秋のことです。
ヒリヒリした話になりますが、本当に好きでない人と付き合うのはやめた方がいいですね。
たとえ年の頃が二十代後半に差し掛かかり周囲で結婚報告が増えてきて、わたしが在宅勤務のストレスから友達がくれたダンゴムシのおもちゃにシェヘラザードという名前をつけてしゃべりかけて精神を保っていたところにその友達は結婚をしていたという一報が入り、なんだか自分だけが一緒に苦しみを分かち合って生きていける人を見つけられていない気持ちになったとしても、母親と植物園に訪れ美しく咲き誇る薔薇たちを見て、満足して家路についた後に「花も盛りを過ぎたら枯れるんだから、お前もきれいなうちに相手を見つけろ」と、無生物とさえ比較されるのか…? ということを言われても(ガチです)。
そうは言っても一人で生きていくのはつらい。ある程度、自分を優先順位の高位に置いてくれる絶対的な味方でいてくれる人がほしい。そう思うタイプであった私は、いっちょがんばるかと恋愛的な活動にいそしみ、人間と付き合うことになりました!
しかし、心のざわつきと荒れは止まりません。
——あれ、わたしはこの人のことを好きになれるんだっけ?
過ごせば過ごすほど幾度となく脳内にポップアップする問いを、わたしの中のわたしが慣れた様子でロードローラーのごとく押し潰していきます。
いや、ひとまず付き合えるくらいならその人のことを好きなのでは? その人を本気で好きになってしまって自分の感情を制御できなくなるのが怖いから好きと認められないだけなのでは? たとえ今はまだ好きではなくとも、二人で過ごし降り積む何気ない日々がいざ振り返った地点からは愛おしく思えて、そういう情でやがて好きになれるのでは? 物語でもよく見るし、みんな案外確固たる感情はなくて、そうやってやっていってるのでは?
『付き合うことになったから、クリスマスの予定ができたね。指輪とかほしいね』
付き合ってから数週間後くらいに相手の人にそう言われて、うん、そうだね、ほしいねと、なるべくその問いが脳髄に沁みこまないうちにオウム返しにわたしは答えて、家に帰ってから普段は全く飲まないお酒が止まらなくなり気持ち悪くなって一人で吐きました。
いやホントすまん!! 
たぶんおれの問題なんだが、やっぱ指輪ぜったいに欲しくねえ!!!!!
それが、どうもわたしの答えだったようです。
その後、そういえば恋愛の機微がてんで分からないわたしは女友達四人くらいに相談して、相手の時間を使わないように早めがいいとアドバイスをもらい、一週間後くらいに別れを告げました(相手の人は優しくてよくできた人だったので、おれが全面的に悪いです)。

そんな若干人間関係に不誠実なことをしたなあ、とへこむわたしにも女友達は優しい。なんだかんだ趣味が被る小学生来の幼馴染からLINEでこんな一報が入ります。
『男性アイドル(三次元)に興味はありますか?』
添付されていたURLは、あの『INI|‘Rocketeer’ Official MV』でした。

www.youtube.com

INIというボーイズグループのデビュー曲だそう。見るのは初めてで、最近のアイドルはゴリゴリ踊るしMVもダンス多めでパフォーマンスを見せたいってことね、スタイリッシュだなあと思いながら何回か見返して、気になったことを言いました。
「この、窓の外にロケットを見つけるひとのお顔、とても綺麗」
運命。まさしくその人がINI・尾崎匠海さんであり、続いて友達が即座にURLを投げてくれたあの伝説のあざと系美少女・西林蓮海ちゃんと、Dynamiteでのパフォーマンス動画を見て、「真っピンクのお洋服がこんなに似合って、キラッキラの笑顔でダンスを踊る男性がこの世にいるんだ!?」と衝撃を受け、一気にこの世界へ引き込まれてしまったのです。
最近のアイドルはすごいですね、チッケムと呼ばれる、候補者のパフォーマンスを一人一人それぞれ固定カメラで映す動画がYoutubeに上がるなんて……布教効率を圧倒的に上げる……。

www.youtube.com

 

ここで簡単に概要をば。
INIというアイドルは「プデュ正式名称挿入101 Season2」(略して日プ2、プデュ2と呼ばれます)のオーディション番組からデビューしたグループです。視聴者の投票によって、101人の候補者(練習生と呼びます)の中から上位11名が選ばれデビューとなる、視聴者参加型の仕組みとなっています。今年の11月3日にデビューということで、デビュー日に向けてたくさんの動画が出て、地上波への露出も増えている時期にわたしは友達から勧められてハマったことになります。今思えば供給の増えたときにハマれてありがたいですね!
さて、尾崎匠海さんは、どうも最終順位5位で見事デビューを飾ったようです。当時投票してくださった皆様、本当にありがとうございます。おかげさまで今わたしは尾崎さんの姿を好きなだけ拝むことが出来ています……。プロフィールはこちらとのこと。

OZAKI TAKUMI|INI OFFICIAL SITE

尾崎匠海さん(22歳)はハスキーな歌声とえくぼが特徴! 高校一年生の時から路上ライブをするなど音楽活動を行っており、歌・ダンス・ビジュアル三拍子そろったオールラウンダーでありながら、とっさに話を振られたときの日本語が怪しかったり、抜けているところがあったり、メンバーによくいじられている愛されキャラです。しかし、ステージでは豊富な経験に裏打ちされた安定感と真っ先にファンのことを考えるプロ意識でグループを支える、大変頼りになる人物でもあります。
わたしが友達に教えてもらったのは、このプデュ2の番組内で披露されたパフォーマンスの部分だけを切り取ったいくつかの動画でした。その時すでに尾崎匠海さんのチッケム動画を日に何回も再生していたわたしは(彼はとても表情を変化させていくのが上手く、恐ろしいほど手のかけられたコマ数の多いアニメを連想させます。一体何千種類の顔のパターンがあるのでしょうか)、BTSさんの『Dynamite』でのパフォーマンス動画の前に泣いていた様子を映す動画を見つけます。
どうしてなんだろう?
泣くっていうのはよっぽどのことで、真剣に取り組んでいるからこそ起こることでしょう。もっと情報が欲しい。彼をそこまでさせるものは何なのか知りたい。どんな景色が見えているのか、どういう願いがあって苦しいこともあるだろうにアイドルを一途に目指しているのかを、少しでも分かりようになりたい。
番組は今年の六月に放送が終了していましたが、GYAOで来年四月までこの日プ2を見られるということで、わたしは視聴を始めることにしました。
「あ、人って人を好きになると、その人のことをもっと知りたくなるって、こういう感じなんだ……」と、このとき散々これまで聞いてきたけれどぴんときていなかったフレーズに納得がいったのです。

 

2.土日を溶かしてプデュ2を見て、推しの順位を目撃する

さて、プデュ2の1話は、101人の中から選考で選ばれた60人の順位が発表されるところから始まります(視聴者の方はこの前にオンタクト審査という、Youtubeに上げられた一人ずつのダンス、歌またはRAPの動画等を見て投票を行ったようです)。
数人で組まれたグループがひとつずつ入場していき、事前に知らされていた順位の椅子に座っていきます。尾崎くんは「浪速のプリンス」という、後のデビューメンバーの後藤威尊くん(さぼりたい気持ちになった時は、彼のストイックさを思い出して心に喝を入れます)、佐野雄大くん(ふんわりした笑顔で頭の回転が速い、勘所を間違えない)と一緒のグループでした。VTRでは、経験者の尾崎くんがグループの二人にダンスや歌を教えるなどの出来事があった旨が語られていました。
ここで尾崎くんの順位が発表されます。彼は、デビュー圏外の14位でした。
ひ、ヒエ~~~~~~!? 
マジ????? あの歌もダンスもできてキラキラしている尾崎くんが!?
(とば口に立った程度の者が言うのは忍びないのですが、)プデュというのは恐ろしいものですね。番組では、さっきまでにこにこしていた尾崎くん自身もその順位を悔しがっているような表情が映し出されます。彼のロールモデルが嵐さんであること、またそれまでの様子から、なんとなく彼はおそらくアイドルを全うするために自分の負の感情を表に出さず、キラキラした面だけを見せることに徹したい人だという印象を受けていたので意外で、この時は悔しさを隠せないほどだったんだろうなと思いました。
しかし、ここで終わる尾崎くんではありません!
みんなの順位が発表された後、即座に「クラス分けテスト」が実施されます。入場したときのグループでそれぞれ自分たちの選んだ楽曲をカバーし歌い踊るパフォーマンスを、この合宿の間に指導を受けることになるトレーナー達の前で行い、一人ひとりレベルごとに上からA~Fのグループに分けられるというものでした。
尾崎くんは浪速のプリンスの二人と一緒に平井大さんの『Stand by me, Stand by you』を披露し、見事それまで該当者のいなかった最上位のAクラスに入ります。
よかった……! 
ステージが終わった後、尾崎くんは真っ先にメンバーの二人に「ホンマにありがとう」とお礼を言います。浪速のプリンスは最高です。後藤威尊くんの“気づけば君の腕の中で寝てた”の“寝てた”の転ぶリズムの歌い方が好きです。真っ白な衣装で踊りはたどたどしくなるのにずっとあのマシュマロのような笑顔を崩さない佐野雄大くんの心意気がすてきです。曲中、“やっぱり君には勝てないみたいだ”の歌詞で尾崎くんはほほ笑んで見せるのですが、その顔があまりにも少女漫画に出てきそうな「君には敵わないな……」という悔しくてでも嬉しそうな表情をしていて、この人がお芝居をしているところを見てみたいなあと思います。

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3 伝説の『無限大』一組シンメ

その後、練習生はグループごとにプデュ2主題歌『Let Me Fly ~その未来へ~』を課題曲として練習を行い(複雑すぎて何をどうしているのか素人目には全く分からないダンスでした)、審査員の前で一人ずつパフォーマンスをするという「再クラス分けテスト」を乗り越えていきます(尾崎くんはこちらもAクラスでした。その時のダンスと歌が見てみたいな…)。それが終わると、今度は次の評価「グループ評価」に番組は進んでいきます。
グループ評価は二組ずつ同じ楽曲でパフォーマンスを行い、どちらのグループの票数が多いか競うルールです。視聴者投票で一位を獲得した木村柾哉くん(現INIのセンターでリーダー! 人望のすごさがまるで漫画の登場人物)がまず自分のグループに入れたいメンバーを選んでいき、その後くじで当たったメンバーが順番に自グループのメンバーを選んでいきます。
一位の木村くんは必然的に選び放題です。元ダンサーで圧倒的なダンススキルをもつ西洸人くん(現INI! お顔立ちが端正で特徴的で一番初めに覚えました)を初めとし、今から見ても錚々たるメンツがそろっていき、尾崎くんもこのメンバーに選ばれました。
このグループが披露したJO1さんの『無限大』に衝撃が走ります。

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 (太田駿静さんのラップがとてもすきです)。
みなさんご覧になりましたか? 藤牧京介さんと尾崎匠海さんのハモリを。
藤牧京介くんはこの方です。

FUJIMAKI KYOSUKE|INI OFFICIAL SITE

ここで藤牧京介くんの話をしますと、「まあ、まずは彼のオンタクトの動画を見ておくんなまし…」という布教妖怪の人格が出てしまいます。彼も現在のINIのデビューメンバーなのですが、とにかくボーカルがすごく、ダンスも未経験ながら上達っぷりがすさまじいです(上手いのは体幹がすごいというのがあるらしいです…)。デビュー前、Tic Tokで顔出しなしで歌を上げており、フォロワーが19万人いたそうです。

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この、まるで南アルプスの晴れた冬の青空に漂うくっきりとした白い湯気をすくっては集めて強い布として織ったみたいな、どこまでも澄んで柔らかくかたちを変える歌声はずっと聴いていたくなってしまいます。
さて、無限大の尾崎くんの歌声の方ですが、わたしは「六月の風みたいな声だなあ」と思います。少しハスキーで、雨粒をまき上げるように足元から大きく吹きこんで、草木の匂いを運んで爽やかだけど、去った後にしたたるほどの花の香りを残していく声。
そんな二人のハモリはすっきりとした口当たりで溶け合い、よく伸びます。これを聴きたくて聴きたくて何回も再生していると、なんてことをしてくれるんだ、最高だ! という高揚感と、微量のほろ苦い切なさが変わりばんこにおとずれて胸を焼きます。
実力の拮抗し合う者同士がやっと巡り会えて、互いの力をおさえることなく出し切って歌い合う姿は、見ている方も嬉しくなってしまうのだと知りました。彼らもそれが嬉しそうに見えて、そんな出会いがこの世にあってよかったこと、そこはどんな地平なんだろう、どんな景色を見たんだろうということを繰り返し想像してみます。
そして、それはステージを諦めず手を伸ばし続けた者たちだけが掴んだ奇跡であり、だから青春の終わった私の人生にはもう二度とふたたび訪れないであろう光景だということを思います。
INIになった後、ふたたび『Brighter』という楽曲で彼らは背中合わせでの歌唱を披露します。
こう、本人たちの人生だから外野のオタクが言うことで彼らの関係性にひびを入れるようなことはしたくない、呪いになるようなことはなるべくかけないようにしたいとは思っているのに、でも、だけど、二人が伸び伸びと歌ってくれるのを見ると、どうしても在りし日に叶えられなかったかつてのあの子との関係性の、行き着きたかった場所に代わりに至ってくれたような、行き場のない魂が少しずつ成仏するような気持ちになります。

 

4 「見ていたら、分かるよ」と思うこと

※この章はアイドル育成スマホリズムゲームアイドリッシュセブン』の第二部第九章までのネタバレを含みます。
INIにハマる前からどはまりしていた(現在進行形!)『アイドリッシュセブン』という、アイドルをテーマとした大変読み応えのあるシナリオのゲームがあります。男性7人グループのアイドル・IDORiSH7が様々な苦難を乗り越えながら(本当に色々ある)、トップアイドルを目指して駆け抜けていく日々を光陰鋭く描き出した魂を揺さぶる力強い作品です。
その作品の中で印象に残っている場面があります。グループ内で最年少メンバーのうちの一人、四葉環くんの「(ファンが自分のことを)見てくれてる気がした」という台詞です。

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四葉環くんは、小さいころDVをする父親の下で暮らしており母親を早くに亡くしています。母親が亡くなった後は妹と施設で暮らしていたものの、妹は養子としてもらわれていき、離れ離れになってしまいました。彼がアイドルを目指した理由は、テレビに出て妹に見つけてもらい再会したいからというものでした。
環くんは、(事情があるのですが)番組に大遅刻して収録を潰してしまったり、番組にサプライズで現れた実の父親を殴ってしまったりと、序盤はかなり問題児のように思える行動が多い人物でした。親を早くに失った生い立ちもあり、たとえ自分を叱った人がいても十年先に見守ってくれているわけじゃない、頑張って直しても見続けてくれる人はいないから頑張ったって意味がないと思っている姿が描かれます。
しかし、アイドルとして活動していくうちに環くんの心境にも変化が出てきます。ある日、出待ちのファン(本当はいけないことですね!)が「(環くんが)最近頑張ってるように見えるのが嬉しかった」と言って泣いてしまったのを見て、“自分のことを見てくれている人がいる”と思うようになっていきます。環くんはこの後どんどん成長していき、ジェットコースターの如く急勾配なストーリーに心が折れそうになる読者の心をも支えてくれます(アイドリッシュセブンのオタクは「しんどい……!」と言いながら嬉々としてシナリオを読む性質があります。それでいい、人生はしんどいものだし、アイドリッシュセブンは人生の教科書なので……)。
このシーンは読んだ当時から大好きなのですが、いざアイドルにハマった後に読み返すと、わたしは全然この台詞の本質を分かっていなかったなと思わされます。
尾崎匠海さんを知って、INIを知って、プデュ2で頑張っている練習生の姿を見ていると頭の中でずっと、「見ていたら、分かるよ」という、どこから来たのかも分からないフレーズがこだまして、止まないのです。
「見ていたら分かる」というのは、ある意味暴力的な感覚のように思えます。見ていたらと言っても、わたしたちに見えるのはアイドルの“見せている”姿であり、分かるというのもあくまでも自分はそう思いたいというだけの話かもしれません。アイドルにハマる前のわたしは、「アイドルなんて、表に見せている姿はきれいな嘘でしょう」と考えていました。
わたしは浅はかだったのです。思うのです、見ていたら分かるということは本当にあるのではないかと。
プデュ2はオーディション番組であり、練習生の苦悩する姿、練習に励む姿が映し出されます。松本旭平さんが「自分は最年長なのに教えられることが何もなくて」と言ったときに「そんなことない!」と叫んだ練習生のこと、誰かがパフォーマンスする前にいつも大きな声で名前を呼んで鼓舞する松田迅くんの明るさ、きっと悔しいことも苦しいこともあると思うのに真っ先に仲間に称賛の言葉を贈るテコエ勇聖くんの純真さ、踊っている途中にもメモをとる森井洸陽くんの愚直さ。視線、眼差し、誰かをてらいなく慰める手、泣いてしまった子を皆でハグするメンバー、果たして自分はこれまでの人生で人と向き合ったことがあっただろうかと思わされるほどの、何度も話し合いを重ね気持ちに一生懸命寄り添おうとする声かけたち、ここには書ききれないたくさんの出来事。その中に、彼らの本物の姿はやっぱりあって、わたしたち皆、見たらそれが本物だと分かるのではないかと。きっと、環くんの前で泣いたファンの子も、こういう風にテレビに映る彼の一挙一動を見てそう思ったのかなと思い至りました。
ステージの上の彼らに向かって掲げるスローガンやうちわやペンライトは、「あなたが頑張っているのを見てるよ」を伝え続ける手段なのだと、わたしはやっと理解したのです。
“見られている”という意識は、人を苦しめるものでもあります。
プデュ2屈指の名場面のひとつ(と、思っているのですが)、七話で尾崎くんが『Dynamite』のステージの裏で明かした思いも、それに由来するものでしょう。
プデュ2はの六話からは「ポジション評価」に入っていきました。ポジション評価はその名の通り、ポジションに対する評価を競うもので、ダンス・ボーカル・ラップにそれぞれ複数課題曲があり、自分の選択した曲目をパフォーマンスし得票数を競います。
ボーカル志望の尾崎くんは、ボーカルを選ばず「何がきても自分は頑張れると思うので」とHIDDENを選択します。HIDDENは全員が曲を選び終わるまでポジションも曲も明かされない謎のカードでした。開示されたのはBTSさんの『Dynamite』。尾崎くんはこのグループでセンターをつとめることになりました。
前回の5話では第一回順位発表式があり、残っているのは40人の練習生です。ハイレベルな練習は続き、メンバーの皆が殻を破って成長していくなか、尾崎くんは「センターだけど目立っていない」という指摘を複数の人から受けていきます。
伸び悩む尾崎くん。Dynamiteグループの練習生たちはパフォーマンスをトレーナーに見てもらいます。指導の途中でダンストレーナーの梨乃さんは、“匠海はまだなんかかっこつけてる” “何があなたを止めているの?”と尾崎くんに質問します。
尾崎くんは、最初は普通に話そうとしますが、突然言葉に詰まりながら長い時間をかけて答えます。そういうところを全部出せ、と鼓舞する梨乃さん。尾崎くんは過去に活動をしていたときに誹謗中傷を受けた経験から、カメラの前での振る舞いが視聴者にはこう見えるということを考えてしまい、振り切ってパフォーマンスができないという胸の内を明かします。
それを聞いた後に梨乃さんが尾崎くんにかけた言葉は、おそらくこの世の人みんな、本当は生まれた時からそう言われたかった言葉だと思います。
「私は、あなたのかっこよくないところも大好きです。全部全部、私が受け止めます」、と。
その出来事を受けた尾崎くんは、本番では思いっきり弾けたキレッキレのパフォーマンスを見せてくれます。

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ハマりたて当時、何もこれまでの背景を知らなかった人間が見ても、「この人はすごく嬉しそうに踊るなあ!」と思って、どう足掻いても惹きつけられた笑顔がそこにありました。
尾崎くんはアイドルであることにとても真剣なので、どんな時でもファンのことを一番に考えて、たとえ辛いことがあったとしてもファンの前ではニコニコの笑顔を見せてくれる人なんだろうなと思います。
それでも、わたしはこの時のあなたの笑顔の中に本物はあると思ったのです。見ていたら分かるよ。そうだったらいいな。あなたのことを好きな人はみんなきっと、あなたに辛いことがあったら辛いし、あなたが心の底から笑ってくれることが本当に嬉しくて、これから先もどうか楽しい瞬間がたくさんあってほしいと願っていると思うのです。
アイドルになった尾崎くんは、これからも色んな人に見られて、また過去にあった出来事と同じように心無い言葉をかけられる瞬間が訪れるのかもしれません。それは人生を破壊してしまうほどの力を持つものであり、わたしはとても想像ができず、なぜふたたび険しい道をゆくのですかと思います。
でも、その理由をずっと考え続けていて、分かったような気がするのです。
——ああ、あなたは歌うことが、踊ることが、笑顔で人を幸せにすることが、アイドルに関すること全てが本当に本当に大好きなのですね。
その気持ちが、ステージに立ち続けることで生まれるどんな苦しみや不安をも、最後には超えるほどの強さでまたたき続けて、何度でも何度でも打ち勝って尽きないままあなたの中に在り続けるからなのですね。
だけど、推しがひどいこと言われるとしたら悲しいから、わたしは負けないくらいの“好き”を伝え続けたいぜ! 来年はファンレターを書けることになるのが目標です。ちなみに、章の冒頭で紹介したアイドリッシュセブンは、現在五部の公開開始により、これまでの全ストーリーが解放されています。ご興味のある方は、よかったら少し覗いてみてくださいね~!

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5 推しを前にすると語彙が消える

常々不思議だと思っていたフレーズがあります。
たとえば小説。高校生の青春もので、海沿いの帰り道を歩いているものとします。会話を交わす中、価値観がぶつかりあったときに、男の子が夕日に照らされる女の子の姿を見て「その時の彼女がきれいで、何も言えなくなってしまった」——と、いうような類のシーン。歌でもありました。“たったひとつ確かなことがあるとするのならば 君は綺麗だ”と。
かつてのわたしはこう思っていました。いや、そこを論理的に説明してくれよと。
まず小説の方。待て待て待て。彼女が綺麗であることと議論の正しさは違うやんか、そういう私情を挟まずお互い納得するまで頑張れ、読んでる方としては直接そのときの彼女の姿を見たわけじゃないから分からんのよ。歌の方。いやめちゃくちゃメロディ綺麗で好きだし“答えはわからない 分かりたくもないのさ”まではなんとなく分かるんよ。確かなことは“君は綺麗だ”って、何? どっから来たの? これまでの流れとそこが同率に並んで気持ちに一区切りがつくのはなんでなん?
ところが、尾崎匠海さんに出会ってからのわたしは思いっきり手のひらを返します。
いや、ちゃうねん! と。
プデュ2は続きます。「コンセプト評価」の、まるで雲の上に降り立ったかのようにファルセット爽やかな夢心地の楽曲『Another Day』。「デビュー評価」の、みんなが真っ白の衣装で現れて舞い踊る天国と見まごうばかりの『RUNWAY』。その衝撃を言葉にしようとし、失敗して、たったひとつのことしか言えなくなります。
「尾崎匠海さん……綺麗……」と。
正確には、あとに続く言葉として「美人」「かっこいい」「かわいい」くらいのバリエーションはありますが、そんなものです。わたしの場合、推しを前にすると言葉を失い、それでも想いをかたちにするために、「きれい……」という単語を発することしかできなくなることが分かりました。
え? あなたさっき「説明してくれよ」とか言ってたじゃないですか。いや、違うんですよ! わたしは悲しいことにダンスとか歌に造詣が深くなくて、パフォーマンスですごい! と思った部分があっても“どうすごいのか”を説明できなくて、「ここがやばい」「ここすき」としか言うことができなくてですね。そもそも生身の人間の動きを完全に言語にして伝えるってこと自体が難しいじゃないですか、でも、それでも確かにある推しのすごさをこの世に残しておきたくてうめくように呟いてしまうんですよ。
推しの供給はどんどん出て来ます。デビュー後、INIは公式チャンネルにたくさんの動画を上げており、『[INI Birthday Party] Masaya. Yudai. Shogo. Jin』では、十月が誕生日だったメンバーをお祝いするためのパーティーを楽しむ皆の姿が見られます。動画では誕生日のメンバーが他のメンバーに叶えてほしいお願いをリクエストし、リクエストされた側が叶えるという企画が催されていました。十月十日が誕生日の木村柾哉くんは、「即興お手紙」(相手に対する思いをその場で手紙の文章のように伝えるというもの)をリクエストし、それに応えた尾崎くんは思いが募ってしまったのか泣き出してしまいます。
「匠海……泣いている姿も綺麗だよ……」(誰目線?)。
人の泣いている姿を見てそれはどうなの? いや、違うんですよ! プデュ2から追っていると、尾崎くんは『Let Me Fly ~その未来へ~』を全員で躍った時、視聴者投票一位だった木村くんがセンターで踊る背中を見て尊敬してずっとお手本にしてたっていう話があったり、木村くんは『Another Day』を練習していた時に尾崎くんの歌が伝わりすぎて泣いてしまったことがあったりしたというエピソードが二人にはあってですね、そういう関係性がすばらしいなって、人が人を想う気持ちが一途でまばゆくて美しいなって思ったという話なんですよ。あと尾崎匠海さんは横顔がすっごいきれい……。
あの、あれです! 人間は、その人に合っている環境の下でその人が持っている力を全て発揮している時って、魂が輝いているじゃないですか。その輝きを目撃した周りの人間は、圧倒されて「綺麗だね……」としか言えなくなってしまうものなのだと思います。
かく言う経緯で、わたしは“君は綺麗だ”の歌詞の意味を理解したのでした。

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6 あなたは、

冒頭の、話をします。わたしにとって、という話をします。
それまでもあまり触れてはこなかったのですが、大学生になってから特に恋愛もののドラマがどうしても見られない、恋愛ソングが聴けなくなる時期がときどき訪れることがありました。
目に入るのも辛くなるぐらい強い拒絶が起こることがあり(見られる時もあるのでコンディションによるようです)、理由も分からずネットで調べ続けていたところ、「アセクシュアル」というセクシュアリティがあることを知りました。そのときは、「恋愛感情を持たない、他者に性的に惹かれない」くらいの理解をしました。
それを知って、楽になる部分がありました。でも、声が聞こえ続けるのです。
「勘違いじゃない?」「まだ誰のことも好きになったことがないからじゃない? いずれ好きな人が現れるよ」「人とのコミュニケーションに問題があって、恋愛に発展させられたことがないだけじゃない? 未成熟さと経験不足が原因だよ。いずれそう思う時がくるよ」「いまアセクシュアルだって言っておいて、その後もし人を恋愛的に好きになってしまったら、“完璧な”アセクシュアルじゃないってバッシングを受けるんじゃない?」
それは自分が自分に言い聞かせる声でした。その時は「じゃあ、わたしはアセクシュアルではないんだろうな」と思うことにしました。だって、わたしは大切な誰かとすこし拘束力のある契約を結んで一緒に生きていきたいな、という望みがあったからです。
たった一度だけ、本当に好きな人がいたことがあります。
その人との関係はどうしようもない嵐があってわたしから壊してしまって、それでもその人を好きになったことが、本当に、あと一歩で自分を破滅させる道を選ぼうとしていたところを、蜘蛛の糸のようにわたしを救ってくれたことがありました。
だから、僥倖はもうわたしの人生には残されていないんだろうなと思いました。
時は流れ、わたしは社会人になりました。恋愛は相変わらずものすごく嫌いになる時期があったけれど、周りの友達もパートナーを見つけたりしてとても幸せそうだったので、わたしもそんな誰かがほしいなと思っていました。
どうやらわたしが人を恋愛的に好きになるのはものすごくまれみたいで、出逢わない確率の方が高いようだ。叶うならば、恋愛じゃなくても親密な友達と一緒に暮らしていくという選択肢もあると思ったけど、その友達にいつかわたしより大切な人が現れないとも限らない。どうせ恋愛ができないのなら、恋愛感情が湧かない人と付き合ってみて、一緒に過ごすうちに生じた情を温めて育てていくのがいいのではないだろうか!
あとで友達にこのロジックを話したら「それは発想の飛躍じゃない?」と言われましたが、当時のわたしはまともに考えてこの結論に至り、試しました。
直感に蓋をします。心が囁く声を無視して抑え付けます。大丈夫な顔をして、関係性を進展させることだけを考え、相手の言うことにオウム返しに応えます。嘘がどんどん膨らんでいき、それを裏切ったら大変なことになるからと自分に負荷をかけて関係性を継続させる理由をつくります。仕掛けをつくって、自分の心を反応させようとします。
心に無理矢理言うことをきかせようとするのは、その時には耐えられてもあとから反動がきます。でも、わたしはたぶんこれを続けていくしかないのです。もう誰かに出逢えることはないのだから。どんなに輝かしかった出会いの感触も、大事に大事にとりだしてくべているうちに、擦り減ってこの身に蘇らなくなり、それが存在することを信じられなくなってしまう。わたしは、感覚をふさいで日々を生きていく。未来永劫。心が軋む音に耳をかさないまま。
でも、
尾崎匠海さんは、現れてくれたのです。
あの、ピンクのダイナマイトのようにはじけるような笑顔の男の子が、もう僥倖はないと思っていたわたしの人生に現れて、突然キラキラ光ってくれました。それがわたしにとってどれほど大きいことだったか、忘れたくなくてずっとずっと言葉を探しているのに少しも見つけられていません。
この人のことをもっと知りたいと思いました。どんなに見ても擦り切れない輝きがありました。尾崎匠海さんに出逢って、INIを知って、プデュ2を知って、動画を見ては毎日世界の意味が分かるようになって、泣きながら日記にそのことを書き留めました。人の気持ちを想像するようになりました。MAMAという音楽祭のステージで船の上で雨の降るなかパフォーマンスをしていたときは、みんなかっこよすぎて、その衝動のぶつけどころが分からなくて、ひたすらにお台場のその日の気温と海上と陸上の気温差の関係について調べました(よく分かりませんでした)。心が誰にも強制されず、動きます。それはわたしがわたしの心を矯正しようとして作った、硬くて痛いだけの仕組みを思いっきりぶち壊して、縦横無尽に駆け巡って、そのエネルギーは尽きることがないのです。
それで分かったのです。
なんだ、わたしはちゃんと心から人のことを好きになれるのだと!
(それが恋愛か、恋愛じゃないかはいったん置いておいて!)
人生は長いから、出会いに出会う前は、この世にあるとはとても信じられなくて、いつ来てくれるのかも分からなくて、助けてほしいのに現れなくて、諦めたり出会いのあった人を妬んだり、自分を破滅させる道を選んだりしてしまいそうになります。
今では思います。他人に期待するななんて嘘。願っていい。憧れていい。信じていい。どうかそれまでは逃げ伸びて、最悪失敗してもいい。心だけは殺さないで、この世に期待して待っていたっていいんじゃないかと。プデュ2トレーナーのKENZOさんは言いました。「エンターテイメントなめるなよ」と。そうだと思います。人生をかけて人を楽しくさせようとしてくれる誰かがこの世にいるなら、その輝きに出逢わないわけがないのだと。尾崎匠海さん、あなたは知っていたのですか。アイドルにはそういう、人を底から強く引っ張り上げる凄い力があることを。だから、目指していたのですか。わたしは全然、あなたに会うまで知らなかった。

 

7 もう一度『Stand by me, Stand by you』、そしてわたしはわたしを許すことにした

そうして、繰り返し『Stand by me, Stand by you』の浪速のプリンスのパフォーマンス動画を再生していたわたしにある日それは起こりました。
尾崎くんが、あの甘いハスキーボイスで“一人は出来の悪い男で もう一人はお転婆なプリンセス”の節を歌い上げたとき、確かにわたしの胸の中に生成された感情は”恋“だと思ったのです。
それはたぶん、尾崎くん自身に恋をしたのかというとそれとも多分違っているのだと思います。指先まで意識のいったキレのあるダンス。一音一音粒がそろっているから、歌詞の意味までまっすぐに伝わってくる発声の歌声。きらきらと輝くその姿の裏に、血のにじむような鍛錬があったのが分かると思う。アイドルとファンという距離のまま、わたしは、その日そのときステージの上で、気の遠くなるほどの努力が積み重なって作り上げられた作品の中で表現された“恋”を体験したのだと思います。
そしてなんだか安心するような、不思議な感覚が訪れたのです。ああ、わたしは恋愛をしてもいいし、恋愛でない感情に従って行動してもいいや、と。男の人でもいい、女の人でもいい、それ以外の性別の人でもいい、本当に心の底から一緒にいたいと思える人を、心が示す方向のまま、わたしは選んでいい。選んでいいんだと。
*****
そのあと、わたしは新しい言葉を知ります。「アロマンティック/ロマンティック」という恋愛的指向を示す言葉です。性的に他者に惹かれないことがアセクシュアルと呼ばれるように、恋愛的に他者へ惹かれないことはアロマンティックと呼ばれるそうです。また、「スペクトラム」という言葉も知りました。これはアセクシュアルからセクシュアルまでの間に広がるセクシュアリティの強度の幅(分布)を表し、これを用いれば、性的な魅力や欲求を持つことはあっても極めて弱い場合、その幅の間に位置する「アセクシュアル寄り」のセクシュアリティであると考えることも可能です。
なるほど、わたしは恋愛感情がまれにあるからアセクシュアルを自認することを悩んでいたけれど、ロマンティック・アセクシュアルに分類されるのかもしれないし、アセクシュアル寄りって考えてもいいんだ……。え、そうしよ……だってなんかよく考えたら皆恋愛が辛いことあっても楽しいこともあるからしてるんだもんな、わたしただただ辛くなるし……もう誰に何を言われたってわたしが心のままに楽に生きていけるならいいや……。
そうして、わたしはロマンティック・アセクシュアルであるとひとまず自認することを自分で自分に許すことにしました。

 

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8 おわりに

最後まで読んで下さりありがとうございました!
そんなこんなで、わたしはいま尾崎匠海さん、そしてINIの沼で毎日供給に溺れながら、とってもとってもハッピーに過ごしています☆
さて、INIですが年末は30日(木)午後5時半からの『日本レコード大賞』、31日(金)23時45分からのCDTVへの出演が決まっています! 初めて知ったという方は、よかったらチェックしてくださいね!!(布教)
尾崎匠海さん、あのときわたしの目の前に現れてくれてありがとう。自分を信じて、夢を諦めないでアイドルを目指し続けてくれてありがとう。毎日毎日、あなたに助けられています。本当です。これからもどうか怪我には気を付けて、あなたに楽しいことや嬉しいことがたくさん、たくさんあることを願っています!

 

特別お題「わたしの推し

 

9 おまけ

ここからは、プデュ2も視聴して感じたINIのメンバーの皆さんの印象を書いていきます。みんな大好きだ……!

池﨑理人さん:池﨑理人さんに関してはお顔がたいへん好きです。AGEHA』のパフォーマンス動画本当にラップパートきたときカッコよかったです! INIの歌を口ずさみたくて練習したのですがラップが全然できなくて、池﨑理人さんのスキルとあの低音の魅力のすごさを知りました。WORKSPACEの裏声もきれいで歌を聞いてみたいです。ときどき様子がおかしいところに爆笑させてもらっています。でも、いつも気遣いが出来て人を傷つけるようなことを言わないで、優しくフォローをいれる姿がとても素敵です。

木村柾哉さん:わたしにINIを教えてくれた友達の推しです! いつもありがとうございます!(?)。プデュ2からいつもいつもメンバー一人一人のいいところを引き出そうとする振り付けを考えてくれていること、伝わります。負けず嫌いなところも度を越えていてもはやかわいげです。あとは、いけると思った人に残虐性を発揮するところとか、ファンミで会場のMINIの皆さんを自分の味方につけるところとか、あ~このひとずるい! こういうところにファンはやられるのね! とちょっとわかりました。 

後藤威尊くん:はんなりお上品フェイスで自分にはどこまでも厳しくて芯があるのに、他の人にはとてもやわらかく優しくて人間として素敵すぎる……。ファンミーティングのとき、命をかけてパフォーマンスすると言うのを聞いて、後藤くんは心から本気でこの言葉を言っている人だ、と思ってもう泣きそうだったよ。MAMAのステージのとき、カメラに映るたびウィンクがキマっていてとってもかっこよかったです。そしていつも期待値を超えていくギャグセンスが大好きなので、これからも貫いてください!

佐野雄大くん:プデュ2のクラス分けの後、「(顔だけで)笑っているだけでデビューできると思われたくない」と言っていて、雄大には雄大の苦悩があるんだなと思ったよ。そのあと「(Fクラスでも)頑張れそうです」って言ったところで、ああ、この人は天性のアイドル性があるなあととても好きになったよ……! INIのバラエティ動画が上がるたびに、ツッコミやボケがうまくて頭の回転早いな~と思っています。あと、雄大の上等のコートにかかった粉雪みたいなウィスパーな歌声が大好きだよ!

許豊凡さん:わたしはフェンファンのことが大好き! フェンファンの完成された骨格から優美に放たれるダンスが好き。SHADOWのチッケムは最高。衣装の少し袖の膨らんだ白シャツを見たとき「ドラキュラのコスプレしてほしい~!」と思いました(?)。歌声が好きです。あのガラスを擦れ合わせるような、キンと割れてしまいそうに薄くて硬い声と、言葉に新しい印象を与えてくれるような発音が好き。アイスをとても大きい一口にして食べたり、徹夜してクッキーを作ったりする振り切った真面目さが大好き。フェンファンは自分のことを真面目過ぎて面白くない…と言ってたけど、大丈夫、あなたはすごい面白いです。日本でアイドルになることを選んでくれてありがとう……!

髙塚大夢さん:ずっと言いたかったんですけど、ぼくはプデュ2本編の『AGEHA』の練習をKENZO先生に見てもらった後で、「通し練あんましてなくないですか?」からこのあとどう練習していくか建設的に議論をしようとしていく髙塚大夢さんマジかっけー! と思っていました。こう、この人サークルとかでもちゃんと作品作りのために複数人の人たちと意見交し合って課題落とし込んできた実績ある人なんじゃないかなって(※想像です)。コメントからも感性が豊かで繊細で真面目なのが伝わってきて、でもキュートさもアイドルアピールもある、超クレバーな髙塚大夢さんのこれからが楽しみ!

田島将吾さん:たじは本当にハイレベルなスキルと精神性で木村柾哉さんとプデュ2を牽引した人ですよね、プロ意識、視座の高さ、気遣いの人、関わる人を隅々まで大切にする姿勢……だけど普段はふわふわなのギャップがえぐいんよ。散々二次元履修してきたけど、こういうギャップ本当に新鮮でアイドルってこわいよお、沼……。モーニングルーティーンで歯磨きして頭ぶつけちゃうシーン本当に好きです。あとなんか、尾崎さんと絡むときにちょっとはっちゃけたたじが見れるのでかわいくて嬉しいです。

西洸人さん:プデュ2で一番泣いたのはマジで西洸人さんの順位発表式のときのスピーチです。わたしは嗚咽した本当に。そして言わずと知れたファンミでの「(このペンライト)全部俺ってことでしょ?」にもまた号泣、号泣です。アイドルってこういうことか。あなたに皆ライトを振っているよ! 『Rockteer』のホッハ、『Cardio』のあの扇みたいに床に手をつくやつ(説明下手か?)の振りのところがかっこよくて大好き。あと、MJと並んで画面にお顔が映るたびに「洋画か?」ってなる選手権優勝しています。

藤牧京介さん:歌っているときばかりか喋っている時の声もクリアーでキレイなの勘弁してくれませんか(?)皆がもう言っていることだと思うけれど、あなたのキレッキレなツッコミでしか得られない栄養があります、続けてください。そんなツッコミをする人だからさ~恥ずかしがってファンサとかしない人かな~と思っていたら、ステージでは本当にキラッキラの笑顔で歌って踊っているのを見てアイドル~! ってなります。ヨントンレポにあった「性別関係ないもん」をわたしはずっとお守りにしています。

松田迅くん:MJはいつだって最高なんだ!! パフォーマンスの控室でいっつも立ち上がって声援を送ってる、いつもそう、このエピソードはINIを人に布教するときに必ず話しています。わたしもそんな風に人を愛して鼓舞できる人になりたい!(?)最年少だけど場を回すのが上手くて、MC任されたときも盛り上げてくれるの頼りがいのありすぎるマンネだよ…。そしてわたしはMJのお顔を『タイタニック』のときのディカプリオの再来か? と思って見ている。洋画なのよ映った時の絵面が完成されすぎてて……。
INIのみんな! 幸せになってくれ!!