朝五時の食品サンプル

魔女になりたい!/朝丘せろり

INI/I期楽曲 ふりかえり!

1.

2.CALL119

3.We are

4.BOMBARDA

5.DILEMMA

6.AMEZE ME

7.Polaroid


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1.


覚えている、4月の18日0時のこと。INIの2nd single『I』がデジタルリリースされた日で、月曜日だから確か普通に在宅でもなくてそのあと会社に出社する日だった。もう徹夜も無理もきかない年になってきた社会人にコンテンツの0時更新はキツいよ〜と言いながら、いざ新曲を複数曲食らったら夢中になってしまって、多分3時くらいまで私にINIを布教した始まりの人間・柾哉さん推しの幼馴染と"ここやばくない?""ヤバい!"等と曲を聴くタイミングを合わせてLINEを送りあった夜があった。


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普段、あまり音楽を聴く習慣がないまま生きてきた方で、音楽に詳しい人って大体中学生の時くらいからCDとか集めているイメージがある。弟がその道を爆走して行ったけれど、私は「えっ、音楽ってこういう3分半に全部の世界観が込められてるんでしょ? これは深そうな領域だから潜るのを止めよう!」と明確にその分岐をへし折った記憶がある(なんて勿体ない人生なんだ!)。

あとは、平常心で聴けないのが問題だった。音楽的教養の無い私は完全に歌詞先行で音楽を聴くタイプになっており、自分に合わない言葉選びや歌詞の世界観があるとブチ切れて憎しみでいっぱいになったりとか、逆に歌詞が刺さりすぎて泣きながら歌詞サイトを検索して感銘を受けたセンテンスを指でなぞってみては受け止めきれなくてブラウザを閉じては開き、閉じては開きを繰り返すのでなかなか数を聴くことが出来なかったりした。たくさん音楽を聴く人って、今はこういう気分だからこの音楽を聴きたいなとさっと出てくるのだろうけど、私は大体こういう感じで自分の暴走に疲れるので、音楽を日常的に聴く習慣が致命的に身につかなかった……


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そんな人間が思いがけず今アイドルにハマり、INIの楽曲を聴くことになった。

聴いたときの感想はこう↓

えっ? これ翻訳文学っぽいじゃん!!!良!!!!

突然の翻訳文学……

私はハリポタで言葉を覚えたオタクだったので海外翻訳文学の文体にどうしても憧れがあって惹かれてしまう。日本だとあまり使わない軽妙な言い回しに意外性を感じたり表現の幅が広がる感覚があったりするし、洋画とかの台詞回しって憧れますよね….(韓国映画とかは構造に意図がバシッとハマっている重みが好きだったりするね)。うーん、ちょっとイメージがずれているかも、なんと言うのだろう、翻訳歌詞って一見平易に見える言葉にも特有の強度があって好きなんだよな。手に収まるサイズのこころよい重さの文鎮みたいな。海外でも通じる歌詞を組み立てる時に国を超えて意味が伝わるように置かれる言葉たちが、選別されてきた者の風格を纏っていていい意味で均一さを備えている感じがいい。そういう雰囲気をINIの楽曲歌詞で感じている。

つまり、KPOPの潮流にある音楽を追っているともう大体歌詞が自動的に翻訳文学になるので(そうなのか?)、私の楽園は……ここにあったのか……! という気づきに至ってハッピーになった。


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音楽を聴く人は、普段どうやって曲を聴いているのですか?

『I』を聴いた時、本当にどの曲も好きで好きでウワーッ、この声色この歌詞この主旋律! とたくさんなって、例えばこれが本や漫画だったら一旦閉じて気持ちを落ち着けてから再開することを繰り返すけれど、でも音楽って流れが計算されていてそれが作品なわけで…と全曲止めずに聴くことにした。

その時の、その1回きりの初めての、もうコンタクトレンズもとって何もかも輪郭が朧げで暗い深夜の部屋の中、新しく聴く音たちが声たちが全瞬間予想がつかなくて、夜を走る列車の梯子のように連続して駆け抜ける、明る車窓みたいな光のかたまりとして頭の中に流れていった心地を忘れない。

もう一度、曲たちを頭から聴きかえして分かったのは、あ、初めて曲を聴くという体験って本当にその1回きりしかなくて、二度とそのときの感覚は戻らないんだということだった。だったら、あんなにあっという間に去ってしまうのなら、止めながらいちいち最高のボルテージに上げていって聴いた方が良かったのか? とも後悔が募って、未だにどっちがいいのか分からないけれど、音楽をシングルやアルバム単位で最初から最後の曲までぶっ通しで真剣に聴いたことがなかったら(酷い)気づかない二択だったから、そういう世界があることを知ることができて良かったと思った。

 

以下、各曲の思い出!


1.CALL119


INIの好きなところのひとつとして、声の幅の広さ、バリエーションの多さがある! 2ndは1stから更にみんなの声の個性が際立って、さらにそれが効果的な組み合わせでバチっと決まっているのが本当に好き。

強めのラップラインで低音をゴリゴリに攻め、ボーカル陣は清涼感に振った歌声で綺麗にメロディーをとると思ったらボーカルラインの声を崩したラップも聴けるんですか? の大満足だった1曲。"Baby 俺がSaving you"ってそんな歌われ方するんすね!

たじくんのアクセントの置き方が韓国語・英語寄りなラップ、理人の低音は言わずもがな指の動かし方とか研究したんだろうなと思わせるカメラでの見せ方がキマッてる、西くんのちょっと鼻にかかってもったりしたラップ、とドス鯉クラブは勿論、私は柾哉さんのブレないお手本のようなダンスをするのにちょっと幼いような声の出し方をするところとか、迅ちゃんの外見は色気たっぷりなのに歌声が少年感を含んでいるところとか、後藤威尊さんのあのスマートさや彼の美学は崩さないままにここに欲しい!と思ったところにアタックしてくるラップが好きですよ。

映像的には、ふぁんたじーのコントラスト(細身で踊りのスタイリッシュな将吾さんと、フェミニンなニュアンスも踊りに入れてくるけど骨格が完成されているフェンファン…)っていいな〜となったり、1番の"Let's go 焚き付けて"で京ちゃんがセンターに出てくるところでJPOP指数が異常に上昇するところ、脳が混乱していい…(私はベイマックスでの桜の描写とか文化が混ざるのが好きなオタク)、そこからブリッジでりひろむの高音→低音→高音でバチバチに高低差を出してくるの、素材を活かしていて最高だな〜となる。

2番冒頭の、尾崎くんの空気多め甘めのハスキーボイス→雄大のウィスパーふわふわボイス、後ろで踊る迅ちゃんとビジュアルでも声でもふらふらと人を惹きこんでおいて、最後ゴリゴリの西くんでぶん殴られる流れ、何もかも分かられている…

3/26日の土曜日に王様のブランチに9時半から生出演して披露するからと、金曜日の夜から泊まった友達の家を朝六時に起きて出て、半分眠っている身体に澄んだ水色の朝日を浴びながら最寄りまで帰ってきてそのまま病院行って帰宅してちょうど始まるところに間に合った思い出があって、その時のぴっかぴかの、なんか爽やかな心地が曲に幾分プラスされてしまっている。

https://youtu.be/RJJAJwJttiY


3.We Are


CALL119とWe Areが出て2曲を聞いたとき、何だか閉塞的な時勢も相まって後者を聴いたら泣きそうになった。人は歳をとる度に底から明るい曲を聴くと逆に泣けてきてしまう生き物なんだな……と知った。We Areに投票した人です(でも活動曲はCALL119で良かったと思っている)。

We Areの振り付けが好きで好きで、私はダンスについて「運動神経がそもそも悪いし、何をどうやったら身体がその通りに動くのか分からねえ…これは無理だな!」と学生時代の体育の授業の時点でこの分野を諦めていたので(アイドルを推すのに持っていたい教養に繋がる道を捨てすぎていないか?)、テクニック的な話が全く分からないけれど、それでもダンスで表現するって素晴らしいなと思った。

特に、1番サビの波のようなカノンと2番サビのあの膝をブクブクブクッ! ってバブルが昇ってくるように動かす振りが、絶対に脚の筋力をえげつなく使うだろうけれど楽曲の爽やかさを倍増させていて、ダンスってこんな風に楽曲の表現を強めるんだな、と印象に残っている。

フレーズでは、"いつかきっと叶えられるさ"が1番好きかもしれない。

ふたつ考えたことがあって、"いつかきっと叶えられるさ"と歌う彼らは、人生を懸けてオーディションに出て何者かになるために期限を区切って自分を追い込んで挑戦してきた人たちで、このWe Areを素直に読んでいったら誰かの夢を応援する歌で、真正面から聴くと何者にもなれずに青春が終わった人間には、若き人たち行く末を応援する心持ちになりながらも、少し眩しすぎる(何視点?)。

でも曲全体として聴くと歌い方も優しげで柔らかくてスっと聴ける。だからなんだろう、発売からしばらく経ってこの前、ふとこの曲がシャッフルしたプレイリストから流れてきた時に思ったのは、何者でもなくたってなれなくたって、確かに"いつかきっと叶えられるさ"というフレーズは、あたしがもし神様だったらこの世の人に絶対に降らせてあげたい祝福の言葉のひとつかもしれないということだった。

こう、何かを目指して叶わないことなんて沢山あるし、そもそも生きること自体がとても難しくてやっとで、でもそんな時にどんな些細な夢とも言えない夢でも夢見ることができたなら、そしてそれに"いつか"という期限が許されたのなら、それはもう叶う叶わないの次元とは別に、そう願えたこと自体が現実の苦痛をただひとつ和らげてくれて、"いつか"という方向を持てることが希望になって頼りない明日を支えてくれるんじゃないかと思った。

私はこの歌でそのおまじないを得ることができて唱えられるようになったから、あって欲しいよな、家族制度とか規範とかそういう網から零れてしまって人生が辛い人がいて、いつかその子の元にもそういうものがあってほしいけどそれってその子がそう思わない限り外からどんなに働きかけてもなかなか上手くいかないから見守るしかなくて、私はそれまで生きるぞ。

西くんが晴れた空の下、ダークサイドの魔法使いみたいな裾の長いジレを着てニッコニコの笑顔で踊るの、いいですよね…

https://youtu.be/_7UIC72D8II


なんか長くなってる! 簡潔に行こうかな!


4.BOMBARDA


BOMBARDA、私の好きな言葉です。痺れるよね。

BOMBARDAの好きなところを言おうとすると全歌詞を引っ張ってきて歌い方を述べる羽目になるので絞ると、もう2番冒頭の"囚われの身なんて What お断りな new type"から"全然いらないdéjà-vu 全てパッと変える the brand new styleに"の一連がハチャメチャに歌詞も声色も凄すぎて訳が分からない、なんなんだこれは。Performance videoでもこの一連の流れが最高に最高を上乗せしていて、松田迅様のこれ映画? みたいな最高なアイソレと表情管理から始まり、良き時代のオープンカーの如く後藤威尊さんがスタイリッシュに赤い衣装で中低音ラップを決め、西洸人が暴れ散らし、田島将吾さんのあの子音が強くてテクスチャ粗いところが最高のラップが来るという……。

この曲のサビの振り、インド映画観てるときみたいなやり切っているからこそのインパクトと同時に面白さが出てるやつで大好きなのだけれど、それを可能にしているのが、踊っているところを見ると何故か"振り付けの意味が全部分かる"とこちらに思わせるパワーがあるダンスブレないマン・木村柾哉の力を感じるよね…

本当に冒頭付近の"またtrick trick 嘘が蔓延った 荒れ狂ったarea"の歌詞でこの世に該当するものがHiGH&LOWかBOMBARDAかの二択になるの勘弁してほしい(もっとやってほしい)。

あと、BOMBARDAでエクササイズを作ってほしい。太腿運動のカロリー消費量が大きいって言うから…

https://youtu.be/uWTItyONqJg


5.DILEMMA


リズムが異質感あって曲者でいい。SHADOW組(後藤威尊・許豊凡・松田迅)が死ぬほど輝いている。全員で作る、囚われる系の振付が曲と合っていて本当に綺麗。歴史画?

扉の振付が二回くらい登場して、ド低音池﨑理人さんがガチっと閉じてからの突き抜け高音ハイトーン髙塚大夢さんに"翼折れたAngel"という詞を歌わせるのは甘美な罪ですよ? ダンスブレイクで雄大・尾崎くんの扉から現れた西くんのものすごく強い敵感が半端なくて笑ってしまう。

藤牧京介さん、お顔があんなに犬かわいくてピュアネスボイスなのにダンスがワイルド寄りなのギャップがいいですよね。

https://youtu.be/vu3kwh9imPQ


6.AMEZE ME


私はIの中でAMAZE MEが1番好き!パフォーマンスで見たい…

歌詞が本当に綺麗。"午後十二時 あの日ざし えくぼのように すっと胸に刻まれ"、どうやって生きてたらそんな比喩が出てくるんだろう?

"気づいてないでしょ"が恋をした人のいじらしさが出てて胸がきゅんとなりますね。あと推しの尾崎匠海さんがCメロの"夜明けまで側にいて"を(多分………?)歌ってくれたので、夜明けの概念が似合う……これが聴けただけで生きる意味がある……になっている。


7.Polaroid


もうさ……IZ*ONEの『Panorama』然り、ガジェットを比喩に使ってくる歌の意味を読み解いてしまったが最後、私はただではいられないことが予想されてまともに歌詞を覚えることが出来ていないんだ……怖い……ほんとすいません……うう、いつか受け止める時がくる……(『Panorama』を知ってから数日間、毎晩歌詞を寝る前に読んでは泣いていたから……)。


https://open.spotify.com/album/3DWxyVxm31t37svmvh3yGA?si=D_mylXmfSAemxzhp75B3dQ


わ〜! 誰に向けて書いているのかも、なんかこんなことを書くつもりだったのかももう分からないですけど、私は『I』が好きだったことを言いたかった!

もう3時間後くらいには3rd『M』のデジタルリリースですね! 楽しみ〜!